(第3項)ショップの在庫は足りないの?多いの?
8.在庫回転率(日数)と在庫消化日数①
では、本格的に在庫に関することを学んでいきましょう!今回はアパレル小売業でよく使わる指標、在庫回転率についてのお話です。ではDさん、Tさんよろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
では、Tさんに質問です。在庫回転率の計算式と、また何を表す指標かを知っていますか?
弊社の帳票にも記載はあるのですが…、在庫回転率の数字が高いと会社にとって好ましい!的な認識しかありません。
せんせ。では、せんせのMD講義を受講した私がお答えいたします。
在庫回転率の計算式は、
”在庫回転率=(期間)売上÷(期間)平均在庫”
となります。この数字が高ければ高いほど、在庫がお金にかわる期間が短く、会社組織のお金が手元に貯まりやすい!ということになります。MDのみならず会社組織にとっても重要な指標となりますね。
Dさん、100点満点の解答ありがとうございます。Dさんが述べたように、在庫回転率の計算式は、在庫回転率=(期間)売上÷(期間)平均在庫となります。
上記の在庫回転率の計算式に、「点数」「原価」「売価」どれを当てはめても基本的にはかまわないのですが、「点数」「原価」「売価」の中で、一番実態が反映されるのはいずれかに該当するか、Tさんわかりますか?
これまでの講義の流れで言いますと、原価ですか?
実を言いますと、在庫回転率の計算をするときには、上記の計算式の原価を当てはめている組織が殆どですし、今後の講義は基本原価で進めていきますので、正解!と言いたいところなのですが、正解は「点数」です!理由は、点数という数字は、絶対に変更が効かない!といったところでしょうか?
せんせ。でも原価金額も変更できないものではないでしょうか?
Tさん、よい質問です。原価も点数と同じように、基本数字を変更できないものではありますが、ここで詳しく述べることはしませんが、会計の考え方に評価減という制度がありまして、(商品の)原価金額は変更できる場合もあります。ですので、絶対に変更が効かない点数を当てはめるのが、一番実態を反映した在庫回転率の数字ということになりますね。
なるほどです。
ということで、在庫回転率=(期間)売上÷(期間)平均在庫という計算式に、点数を当てはめると、在庫回転率の数字の上げ方が理解しやすくなります。
せんせ。(期間)売上点数を伸ばすか、(期間)平均在庫点数を減らせば、在庫回転率は上がるということですね。
流石Dさんです。その通りです!!
なるほどです。
ですが、この在庫回転率という指標を良くすることばかりに注力すると弊害もありますので、簡単に説明いたします。在庫回転率を上げるには、売上点数を伸ばすことが手段の一つになるのですが、ここでTさんに質問です。売上点数を伸ばすことができる、手っ取り早い手段とは何ですか?
商品を値下げ(セール)してお客様に提供することです。
Tさん、期待通りの解答ありがとうございます。では、さらにTさんに復習問題です。値下げして商品が売れると粗利益はどうなりますか?
はい。粗利益が少なくなります。
Tさん、ありがとうございます。その通りです。売上点数を伸ばして在庫回転率を上げることに注力しすぎると、粗利益が低下し、損益が赤字に転落する可能性もありますので、むやみやたらにセールをすることに注意しなければなりませんね。
なるほどです。
在庫回転率を上げるもう一つの手段は、平均在庫数を少なくすることです。またまたTさんに質問です。ショップの平均在庫数を少なくした場合、売上は伸びやすいですか?それとも下がりやすいですか?
はい。ショップの在庫が少ないと商品の売り逃しに繋がりやすく、売上は下がりやすくなると思います。
Tさん、その通りです。在庫回転率を上げることばかりに注力して、むやみやたらにショップの在庫を減らすと、売上が低下しやすくなります。売上が低下した結果として在庫回転率も改善しなかったとなれば、本末転倒といえますね。ですので、ショップに必要な在庫はそのくらいなのか、SVやMDの皆様方にどんどん質問して頂ければと存じます。
了解しました。どのくらいの在庫を持てばよいのかは、時期によっても変わると思いますので、その都度Dさんに質問します。
質問はマーチャンダイザーにしてほしいのですが…、いつでも(店長からの)質問に応えられるよう準備しておきます。
ということで、今回の講義はこれにて終了です。次回は在庫回転日数とアパレル小売業において在庫に影響を与えることを学んでいければと存じます。
では、皆さん。次回もお楽しみに!
佐藤正臣 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp