佐藤せんせの算数で極めるMDへの⑯
大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。
そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。
☆ ☆ ☆
前2回の連載で少し話はそれましたが、今回はどこの会社もお悩みの、残ってしまう在庫。残在庫はどのくらいだったら残してもいいの?ということを考えていきます。
へい。
では13回目の講義。「仕入予算の設定はどうするの3」を振り返り、少し復習してみましょう。
へい。(やべぇ??だいぶ忘れた・・・)
では説明します。
1. 架空の事業部の期の売上予算は1億円。粗利益率の予算は53%(連載の中で変更して53%に落ち着いた)
2.事業部の原価率の設定は35%。値入率の設定が65%
3, 今回はややこしくなるので、期首在庫・定番商品等の個々の会社特有の問題は設定しない
4. 仕入原価予算は(期間)消化率100%で設定(売れた分だけ仕入れる)
でした。でそうなると、Dさん仕入元売価予算はいくらでしたっけ?
えっ??仕入元売価予算?…えーっと。仕入原価予算は4,700万円。仕入原価予算は1億3,428万6千円です。
はい。よくできました(計算方法は過去の連載をご覧ください)。そうすると、売上予算1億円に対して、134%ほどの仕入売価金額を仕入れているということになります。
へえ。そうでした。しかし、私の会社だと売上予算の140%くらいの仕入売価を仕入れている。あれっ?みたいな・・・
そうでしたね。13回目の連載の最後で、その差はおそらく残してしまった在庫ではないか?という私の推測でしたね。
そうです。
因みにDさんの会社では、残した在庫をどうしてます?
うちの会社はアウトレットがないので、ファミリーセール等の催事だとか、Eコマースでセールページを作成して、商品を継続展開して、基本2年でほぼ全商品売り切ってます。
ほ~う(拍手)それはすごい。このご時世は商品を廃棄する会社があるにも関わらず、立派です。
あざーっす(`・ω・´)ゞ
要はそのことを仕入予算を組み立てる段階で想定しておけば良いということです。
???と・・言いますと?
上記の架空の事業部想定では、仕入元売価予算は売上予算の134%。しかし、実際はDさんの会社140%くらい仕入れている。では、このケースでどの程度の商品金額が余っているかというと、仕入元売価140%だということは、仕入元売価1億4千万仕入れた。商品の原価率の設定が35%でしたから、4900万の仕入原価が発生したことになる。ここまではOKですか?
OK牧場です(せんせの馬鹿ギャグに感染した…)
ということは?上記の架空の事業部の売上原価金額は4700万でしたから、200万円の商品原価が余ったということになります。
なるほど~。そういうことになりますね~。
Dさん。因みにこの残ってしまった在庫原価200万を残在庫ロス率とて換算すると?
ロス率の公式は、ロス原価÷売上金額なので、200万÷1億で2%です。因みに期間中の消化率は96%です。
正解です!! Dさんの会社はおそらく優秀ですね~
えへ(〃▽〃)ポッ
Dさんの会社ではその残在庫200万を翌年に売る能力があるいうことですがら、「仕入予算を組み立てる段階で200万は残してもいいよ。場合によっては、当初の仕入原価予算4700万を4900万にしてもいいよ。」ということにすれば良いということです。
???なんとなくわかりますが、もうちょっと解り易く説明してください。
はい。簡単に言うと、残ってしまった在庫(以下キャリー品)を翌年アウトレットやファミリーセール等でどのくらい消化できているのか?ということは、会社のデータ調べればわかることですよね。
そうですね。多分わかりますね。
キャリー品を消化する際にも以前学んだOTB表を活用して、在庫コントロールしなければなりませんが、必ずキャリー品の1年間での消化金額は出てくる筈です。要はその金額分を、仕入予算を組み立てる段階から、残してもいい在庫として仕入予算に上乗せするということです。
なるほど。そういうことか。
そうすれば、やみくもに仕入しすぎることが減りますし、具体的な数値で目標を出しておけば、いくら出来の悪いMD・バイヤーでもそのことは気にする筈です。
ですね~。なるほど勉強になりました。今度予算設計の際に、すぐに実践してみます。
良い心掛けです。次回は追加商品についての話をします。では、お楽しみに~
95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp