商品分析について考えてみよう2(佐藤正臣)

2017/08/21 15:10 更新


佐藤せんせの算数で極めるMDへの道 (21)

 大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。

 そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。


☆    ☆    ☆


Dさん。ついに最終回がやってきてしまいました。


そうですね~なんだか寂しい気持ちです(うそ笑)。


では今回も商品分析についての話です。


へえ。


では、Dさんにちょっと質問です。”あるショップ事業部で前週土曜日入荷した新商品が売れに売れた。それにより店の売上も少し回復した。その商品の販売期間は60日と設定。発注枚数は1400枚(この事業部で1000枚以上の在庫をもつことは珍しい)。土日で売れた数が200枚。つまり日曜日時点在庫が1200枚。こんな状況になったらDさんならどう読み取りますか?


どう読み取る?…う~ん…多分、私というか弊社ならば、みんな喜びますね~。


なるほど。では、Dさんもう一つ質問です。現場(店頭)から、この商品を追加発注してほしい!という声が上がった。Dさんならどう判断しますか?


そうですね~。まだ、在庫1200枚あるので、「在庫あるから安心して」って店には伝えますね。


なるほど~。しかし、こういう考え方もできますよ。1日平均100枚売れたら、この商品12日でなくなる思いません?ならば、現場(店頭)のスタッフの方が正しいということになりますよ(笑)。


ゲッ…(そうかも…)でも、土日は売れるので、平日の売れ方含めたら、まだまだダイジョブなんじゃないですか?


そういう見方もできますね~(笑)。では、土日ばかり売れるショップと仮定したとして、そのショップの1週間の売上うち、土日の売上構成が50%だとしたら、残りの平日での売上数は何枚になります。


へえ。そうなると?…残り、月曜から金曜日の5日間での売上数は200枚になります。


はい。正解です。ということは、1週間での売上数は400枚売れるであろうと予測できる。そうすると、1日の平均売上数は?、400(1週間の売上数)÷7日=約57枚”になります。ということは…1200枚(時点在庫)÷57(1日の平均売上予測数)=約21日”という推測が成り立つということです。だとすれば、現場(店頭)スタッフの判断が正しいということになりますし、仮に土日売れるタイプのショップだとしても、この状況であれば、本部の人間は商品数足りない、失敗した、何か手を打たねば。と考えるべきでしょうね(笑)。


その通りですね~。しかも、これ新商品ですから、次の週もっと売れてもっと早く店頭から消えるような気がします。


はい。その通りです。だからこそ、目先の数値に騙されてはダメなんです。これを本部の人間が見て、消化率14.3%という数値や時点在庫1200枚という数値に安心して、思考を停止していたとしたら、寂しいことですし、現場(店頭)に損害をもたらします。


おっしゃるとおりです。もし、追加発注してからのリードタイムが1か月だとしたら、追加商品も間に合いますし、こんな売れる商品だったら、商品によっては販売期間の延長も視野に入れることができますね。本当に大変勉強になりました。


Dさん。また売上構成比・在庫構成比を並列でみて、できる分析もあるんですよ。


はあ~。それどういうことですか?


例えばですが、先ほどのケースだと、おそらく商品の売上構成比の方が、在庫構成比より高く出ている筈です。(例)売上構成比10%。在庫構成比5%。みたいな感じで。そういう見方ができれば、Dさんもおそらく「この商品足りない!」なんてことが気づけたかもしれません。


なるほど~。ということは、その逆のケース(売上構成比より在庫構成比が高い)の場合は、その商品は「売れない。在庫が残る!」可能性が高いということにもなりますよね。


素晴らしい、その通りです。ただ、一概にそうとも言えないケースがあるので、そこは注意した方がいいでしょう。


それはどのようなケースですか?


例えば、9月の売上構成が5%。9月末の時点在庫構成15%なんて商品があったとして、その商品が冬に着るアウターだったら、おそらく10月以降の売上構成が上がると想定されるので、それはそれで良いことなんです。また、その逆のパターン。9月の売上構成が15%。9月末時点の在庫構成が5%だとしても、その商品が今後売上の下がるブラウスであったとしたら、それは販売終了期間がもうすぐということで、良いことなんです。


なるほど~。勉強になります。


だからこそ、① 分析は売上だけでなく、他の要素(粗利益・在庫・販売期間等)も並列くっつけてみること②データ分析だけでなく、現場(店頭)での売れ方・売り方を実際に目で見て、顧客視点で考えること。この2つのことを意識してみる良いと思います。


へい。そのことを肝に銘じて頑張ります!!


ありがとうございます。では、この連載も最後になりますので一言。


そういえば、今日最終回でしたね~(´;ω;`)ウッ…(ウソ泣き)。


皆さま。長い間この連載をご拝読頂きありがとうございます。この連載が、皆さまにとって、少しでも何かのお役に立てれば幸いです。では、またどこかの機会で皆さんお会いしましょう!さよなら~(T_T)/~~~。


さよなら~(^.^)/~~~(やっと終わった笑)。


編集部記 「佐藤せんせの算数で極めるMDへの道 」はタイトルを変更し、9月末からシーズン2となる連載が始まりますので、こうご期待!!



さとう・まさふみ 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立ち上げをMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。

www.msmd.jp



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