ロンドン・コレクションに参加する新進デザイナーたちの展覧会に行ってきた。といっても服ではなくアート。メタルを使ったオブジェだったり、額に入って壁にかけられた作品だったり、映像もある。
英国ファッション協会(BFC)によるチャリティーブログラムの1つ、BFCファッション・アーツ・ファンデーションが主催する「ファッション・アーツ・コミッションズ」というプロジェクトで、2016年の秋に続く2回目の開催。新進ファッションデザイナーと新進ファインアーティストがタッグを組み、それぞれのクリエイティビティーを鍛えるとともに、英国発のクリエイションを広くアピールすることを目的としている。
アート側のパートナーは1769年創立のコンテンポラリーアートの大学院、ロイヤル・アカデミー・スクールズ(RAスクールズ)で、新進デザイナー支援プロジェクトの「ニュージェン」に選ばれている5人の若手デザイナーとRAスクールズの卒業生5人がそれぞれ1対1、5組のパートナーシップを結んで共同作品を制作。その作品をオークションハウスのクリスティーズがギャラリーに展示して競売にかけ、収益は同ファンデーションに寄付されるというプロジェクトである。
今回の参加デザイナーとアーティストは下記の5組(左がデザイナー)。
リアム・ホッジス X ニッキー・カーヴェル
ポーラ・クノール X アパウ・ジュナ・ボアキーイアドム
リチャード・マローン X マルコ・パルミエリ
セイディ・ウィリアムス X カルラ・ブスチル
サミュエル・ロス(ア・コールド・ウォール)X ジュリー・ボーン・シュワルツ
デザイナーたちの作風はよく知っているが、アーティストについての情報は皆無。そんな目で作品を見ると、クレジットを見なくても、どれがどのデザイナーの作品かは一目瞭然。まさに、リアムはリアム、セイディはセイディ、リチャードはリチャード以外の何物でもない。
こちらがその作品。
リアム・ホッジスとニッキー・カーヴェルのコラボによるオブジェの数々はなかなかの迫力。スクラップメタルやスチール板にビニールコーティングやスプレーペイントを施すそのワイルドなムードはデビュー当時からを知るリアムの世界そのものである。リアムにしてはものすごくカラフルという印象は、パートナーのビッキーを見れば即納得。
セイディ・ウィリアムスとカルラ・ブスチルのチームは、カルラの絵画をセイディのシグネチャーである熱転写プリントを使って布地で再現。1枚ずつ額に入ったものは、ガラスでカバーせずに布の質感を直に見せている。
「トンボラ・ワード・マーケット」と題したぐるぐる回して次から次へとプリントの布地が見られる大作は、72枚を収納。クラッシュベロアだったり、チュールを重ねてその上からプリントしたりと質感もそれぞれで、セイディのアトリエにある機材を使って、2人で次から次へとプリントしたそう。
今回の作品について、どのデザイナーも新作の服の説明以上に楽しそうに語る。コレクション制作と並行しての作品作りは大変だったのではないかと思うが、今どきのデザイナーはファッション以外の様々なクリエイション活動が求められる。まさに若手にとっては多くを学び、達成感の強いブロジェクトであることが彼らの笑顔から伝わってくる。
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あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員