続・英国のスカート男子(若月美奈)

2018/05/02 04:28 更新


英国で再び、男子学生の制服におけるスカート着用が話題になっている。

*若月美奈さんの過去ブログはこちら

前回この話題が飛び出たのは13年夏。 ウェールズにある高校で、男子学生が揃ってスカートをはいて登校してメディアを騒がせた。記録的な猛暑が続く中、スカートで涼しげな顔している女子生徒に比べて、長ズボンの男子は暑すぎる。自分たちも短パンがはきたいと訴えたデモンストレーションである。

早速このコラムで、「スカート男子」のタイトルで紹介した。

この時の男子学生は、あくまでスカートで話題を呼び、短パン着用を認めさせようというもので、スカートがはきたいというものではなかった。

もっとも、時はジェイ・ダブリュー・アンダーソンがメンズコレクションで女装のようなショッキンなスタイルを出して「ジェンダーレス」がにわかに騒がれはじめた5年前。 ファッションショーには男性のワンピースやスカート姿が次々と登場していた。その現状と男子学生のかわいらしいスカート姿が見事に交錯した。

さて今回の英国のスカート男子学生だが、これは本当にスカート着用の話題である。

英国中部の全寮制男女共学の名門校(13~18歳)アッピングガム・スクールの校長が、日曜新聞サンデー・タイムズ紙のインタビューで、もし生徒が自分のところに来て、「これが自分を表現する方法、この服を着たい」と言えば、スカートの着用を許可すると語ったというもの。

早速新聞各紙がこの話題をとりあげ、学生服の現状をリポートした。

それによると、ある共学校は昨年、性を問わない制服の着用を認め、ある女子校では、男子の名前で生徒を呼び、男子の制服を着ることを認めているらしい。全国約80の公立校が異なる性の制服を着ることを認めているという、2016年のデータも紹介されている。

そう言えば、英国を代表する百貨店チェーンのジョン・ルイスが2017年秋、子供服に男女の区別をつけない、ユニセックスポリシーを導入したことも記憶に新しい。同じ売り場に男女両方の服が並び、「Girls」「Boys」といった表示をしないというものだ。

実際、売り場には性別表記はない。しかし、例えば学生服(標準服)売り場には、袋にブルーの帯がついだ男児用、ピンクの帯がついた女児用といった具合に、性差がわかるような色分けがしてある。

さらに、ウェブサイトでは、「Baby Boy Clothes」とか「Girls’ Clothes (2+yrs)」という表記が並び、男女が別のページ(つまり売り場)になっている。実店舗であれば売り場全体が見渡せ、なんとなくグループ分けされた商品の中から、欲しい性別の子供服を見つけられるが、ウェブではそうはいかないということなのだろうか。

性差はもちろん、体型、人種、階級、宗教など様々な垣根を取り払い、人は皆平等であるという概念は、ここ1年ファッション界で急速に広がっている。「バーバリー」は2月に発表した最新コレクションで、そうした概念を広くアピールし、それこそその1つの表現として、スカート男子を登場させた。

ファッションショーにおけるスカート男子にはすっかり慣れてしまったのか、それには全く違和感を感じなかった。

バーバリーの2018年フェブラリーコレクションには何人かのスカート男子が登場した

冒頭のスカート男子学生の話題は、紛れもなくLGBTQ+(性的マイノリティー)に関することだが、ジョン・ルイスのノージェンダー子供服、そして最近の「様々な人のための服」という流れは、固定概念にこだわらず、ファッションを自由に楽しむべきというもっと広いアプローチである。

ジョン・ルイスのノージェンダー子供服の登場時も、性差を超えた服というよりも、「女の子らしい服、男の子らしい服という固定概念はもうアウト」と、メディアに歓迎された。

実は、そういう私の小学生の時のランドセルは紺色(遠目には黒に見える濃紺)だった。50年前のこと。今でこそ、ピンクやキャラメルなどランドセルの色の選択肢も広がったが、当時は制服のある私立校の規定カラーでもない限り、99%以上の女の子は赤、男の子は黒だった。

もちろん、紺色のランドセルは6歳の自分の意思はかけらもなく、ファッション関係の仕事をしていた母の選択。1学年200人、全校1200人程度の東京近郊の公立校。その入学時、赤と黒以外のランドセルは、私以外は上級生に緑1人、茶色1人(ともに女子)だけだったと記憶している。

いじめられたのでは? そう思う方も多いことでしょう。

2年生か3年生の新年度の初登校日に、出席番号順に上が女子、下が男子で横にずらりと並ぶランドセル置き場に全員がランドセルを入れた時、ある女の子が叫んだ。

“誰か男が間違えて入れてる!”

“ごめん。それ私の”

その子が慌てて謝ったのは言うまでもない。私の紺色ランドセルの気まずい経験はそれだけ。決していじめられなかった。それ以上に私は紺色のランドセルが大好きで、自慢だった。よく、子供は残酷でマイノリティーを叩くと言われるが、もっと寛容なのである。

話がスカートからランドセルにずれた。さて、さらに5年後。スカート男子はどのような展開を見せているのだろうか。




あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員



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