ロンドンの着物展、映像ツアーを公開(若月美奈)

2020/06/05 06:00 更新


3月はじめにこのコラムで紹介した展覧会「Kimono:Kyoto to Catwalk」は2月29日の開幕からたったの2週間で休止してしまった。

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プレスツアーに参加した2月26日は、上海に続きソウル・ファッション・ウィーク中止のニュースが流れた日で、パリから来たジャーナリストなどと、アジアは新型コロナで大変なことになっているという話をしていた。まさか、その直後にイタリアで流行し、あっという間にパンデミックになってしまうことなど考えもせずに。

この展覧会が行われているヴィクトリア&アルバート博物館も3月18日から休館となり、今なお扉を閉じている。3月23日に始まった英国のロックダウンも段階的に緩和されているが、一足早くファッション店などが営業再開したイタリアやフランスよりも動きが遅く、生活必需品以外の店の再開は6月15日に予定されている。

ところが、博物館はレストランや映画館、劇場などと同様に7月以降に再開の予定で、会期が6月21日までというこの展覧会は間に合わない。4月の初めぐらいに、せっかくだから映像で紹介するバーチャルツアーをやればいいのにと思っていたが、しばらくその動きは見られなかった。

そうしたところ5月下旬、キュレーターのアナ・ジャクソンさんの解説による映像ツアーが公開された。5回に別れ、全部で約30分のツアーは、着物の歴史や変遷、見所の作品などがわかりやすく紹介されている。

下記がその概要。

1)江戸時代の着物の紹介とともに、反物からできる着物の構造や友禅などの技法も解説。

2)江戸時代の婚礼衣装や歌舞伎の衣装など。歌舞伎役者の佐野川市松が好んではいたチェック柄の袴からそう呼ばれるようになった市松模様のことなど、ちょっとした雑学も。

3)西洋に渡った着物。鎖国時代に通商関係があったオランダの業者が依頼した西洋風のキモノウエアや、ロンドンのリバティ百貨店などで売られていた着物地のドレスなどが登場。

4)20世紀初頭の着物の影響を受けた西洋のデザイナーの服。その一方で洋装と共存する中、進化していく近代の着物を紹介。

5)現代。新進着物デザイナーの作品や世界の著名デザイナーによる着物を意識した洋服。映画や音楽シーンで脚光を浴びたキモノウエアなども公開。


映像での紹介は、実際に展覧会に訪れたかのような臨場感があり、通常はなかなか聞けないキュレーター自らの解説は貴重だ。

英語での解説は・・・という方も、着物や日本の歴史・文化について話しているので、名称やデザイナー名は聞きとれ、意外とすんなり楽しめると思う。

オリンピック同様にこの展覧会も来年に次の機会を、というわけにはいかないのだろうか。とりあえず、映像で満喫ください。


≫≫若月美奈の過去のレポートはこちらから

あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員



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