アパレル企業のネット販売現況

2014/09/18 07:08 更新


「サイトの利便性向上」で販売効果狙う

 今回の「ネットコミュニケーション」特集ではファッション商品ネット売上高調査と同時に各社のネット販売への取り組み状況についても聞いた。その結果、昨年度は商品を販売する「サイトの利便性向上」により売り上げ効果を高めた企業が多かったが、今年度は利便性向上と共に「ブランドコンテンツや情報作り」を重視している企業が多いことが分かった。

 新規参入が相次ぎ競合激化するネット販売では、独自のブランドイメージを打ち出し、顧客を引き付ける情報を発信するなどさらなる差別化が必要になってきている。また、オムニチャネル戦略はほとんどの企業で重要だと思われているが、「具体的には検討中」(中堅アパレルメーカー)とする企業も目立った。

商品画像の質が問われる

 まず「昨年度にネット販売で効果を高めた施策」については、「サイトの利便性向上」「社内EC体制の整備」「商品情報の充実」といった回答が上位を占めた。

 成長著しいネット販売分野だが、比較的新しい販路のため、社内での組織は整備の過程にあるようだ。商品情報や「コーディネート提案」といったモノのアピールの仕方も進化させている。

 一方で「モバイル端末対応」「リアル店舗との連動」「SNS(交流サイト)との連動」などツールへの対応、O2O(ネットと店舗の相互送客)、多様な販路を統合させるオムニチャネル戦略が複合的に進められた。

 昨年度は「お客様の利便性向上を目的に複数施策を実施」という企業が多い。

 その他の具体的な施策内容では、モール系では「商品供給力の強化」(スタートトゥデイ)、「楽天グループとの連携」(スタイライフ)が挙げられ、セレクトショップでは「商品画像のクオリティーの向上、ECへの在庫配分を増加」(ビームス)、「アプリ開発、自社ECから店舗への商品取り寄せ、商品画像の自社撮影」(ユナイテッドアローズ)、「アプリを使った施策」(アーバンリサーチ)という傾向。

 「取り扱い商品の拡充、ECサイトのリニューアル、口コミ機能の追加」(ジュピターショップチャンネル)、「商品スタイル数の拡大」(リーバイ・ストラウスジャパン)などの動きもあった。

ネット伸ばす施策数字なし修正ネット効果施策数字なし修正 (1)

 「今年度にネット販売を伸ばす施策」では昨年度と同様に「サイト内の商品情報など利便性向上」という回答が最も多かった。

 引き続き「社内組織体制の整備」も上位にある。昨年度と違い回答が目立ったのが「ブランドコンテンツや情報作り」だ。サイトで商品を並べるだけでなく、その内容も精査されるようになってきている。「ネットと店の顧客一元管理や在庫管理」という回答も多く、これまで別々で運営してきたところも〝ネットと店舗の一体化〟を試みてきている。

 その他の具体的な施策内容では引き続き「販売機会損失の解消など商品供給力の強化、体制面の強化」(スタートトゥデイ)、「商品画像の内製化、ECへの在庫配分を増加」(ビームス)という回答があった。

多くが売り上げの過半はスマホ

スマホアプリ修正

 ネット販売を利用するツールはパソコンからモバイルとなり、主戦場はスマートフォンになってきている。アンケートに回答のあった「モバイル経由の売り上げ比率」は図表の通り、各社とも大きな増加幅になってきている。すでに全体としても60~70%と過半を占めている企業も目立ち、スマホの普及により増加率が加速しているようだ。モバイル比率の増減では一昨年度と比べて10ポイント以上も増加した企業も少なくなく、20~30ポイントも上昇したところも見られる。スマホ用アプリについては「サービス展開中」「検討中」「未定」が各29%づつとなり、「サービス開始予定」が12%という結果になった。

オムニチャンネルは途上

 オムニチャネル戦略は「重要な経営テーマか?」では、85%が「はい」と回答し、「いいえ」は15%だけだった。ネット販売、アパレルメーカー、専門店など業種を問わず、新たな事業課題ととらえている。「いいえ」は少数派だが、業種で見ると、ネット販売専業、セレクトショップ、メンズ専門店など多岐にわたった。

 推進している施策では、やはり「社内組織体制の改革」「ネットと店の顧客一元管理」「在庫の一元管理」「ブランドコンテンツや情報作り」が多かった。その他施策内容では「コーディネートアプリ『ウェア』の機能拡充、サービス向上」(スタートトゥデイ)、「商品返品交換サービス」(リーバイ・ストラウスジャパン)などがあった。

オムニ施策数字なし修正

 

■アンケート協力企業(50音順)

アーバンリサーチ、アイジーエー、AOKI、青山商事、アズノゥアズ、アダプト、アマゾンジャパン、アレッツォ、イトキン、ヴァンドームヤマダ、ウィゴー、ウィッツ、エイエヌエイピー(ANAP)、エイチ・ツー・オーリテイリング、SMR(メーカーズシャツ鎌倉)、F・O・インターナショナル、エフ・ディ・シィ・プロダクツ、オットージャパン、オルケス、オンワードホールディングス、キムラタン、キャン、クロスカンパニー、クロスプラス、グンゼ、恵山、神戸レザークロス、コックス、コージィコーポレーション、ゴールドウイン、坂善商事、サマンサタバサジャパンリミテッド、サルース、三愛、三陽商会、シーズメン、ジオ、ジオン商事、シップス、シティーヒル、ジャヴァホールディングス、ジャパンイマジネーション、ジュピターショップチャンネル、ジュン、ジョイックスコーポレーション、ジョンブル、白鳩、ズーティー、スクロール、スタイライフ、スタートトゥデイ、ステュディオス、千趣会、大丸松坂屋百貨店、タカキュー、玉屋、TSIホールディングス、デイトナインターナショナル、トリニティアーツ、ナイスクラップ、西澤清、西松屋チェーン、ニッセン、ニューヨーカー、ネバーセイネバー、ノースリバー、パル、パルコ、パレモ、ビームス、ファーストリテイリング(ユニクロ)、ファイブフォックス、ファッション・コ・ラボ、フェリシモ、ブルーメイト、ベイクルーズグループ、ポイント、マガシーク、マキシム、マッシュホールディングス、丸井グループ、マルカワ、三起商行、三鈴、三越伊勢丹ホールディングス、メンズスタイル、ユナイテッドアローズ、夢展望、ヨシキトレーディング、リーバイ・ストラウスジャパン、良品計画、ルック、ルミネ、レナウン、ロコンド、ワールド、ワコール

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