【エグゼクティブキャリアの新市場⑤】バッグ 上質でエレガント、プラス機能性も

2019/05/01 06:10 更新


知る人ぞ知る

 ファッション好きに人気のラグジュアリーバッグといえば「バレンシアガ」や「セリーヌ」「サンローラン」。エグゼクティブキャリアたちは、これらを仕事用に選ばない。百貨店のバイヤーによると、選ぶ視点が全く違うという。

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 エグゼクティブは上質でエレガントであること、パソコンかタブレットが入る容量や機能性を重視する。ブランドがあからさまなデザインは好まず、ロゴやモノグラムがないか、控えめなものを選ぶ傾向だ。

 そんな条件に合うブランドの一つ、伊「ヴァレクストラ」が好調だ。日本では男性のビジネスバッグが主力だったが、レディスが急成長している。売上高はここ2、3年、前年同期比2ケタ増を続け、比率もメンズ7割からレディス7割に逆転した。

 最も売れているのは、ワンハンドルの「イジィデ」。ロゴやマークは一切ない。フォーマルな台形フォルムは仕事でも会食でも使いやすく、奥行きがあるため見た目より物が多く入る。iPadが入るMサイズが一番人気で、37万5000円。100万円超えのバッグを持つエグゼクティブからすると「40万円なら冒険できる」。10色以上の中から色選びを楽しむ人が多い。

 ヴァレクストラ・ジャパンの茂木克仁副社長は「ラグジュアリーブランドとは本来、限定的でひそかな楽しみを満たすもの。ヴァレクストラはそこを狙ってきた。多くの人が持てるわけではないけれど知っているという存在にしたい」と話す。今後はビジネスに欠かせないユニセックスのトラベルアイテムにも力を入れていく。

背景が伝わる

 「管理職の女性がバッグに求めるのは、仕事で活躍する道具としての要素」。そう話すのは「フミコダ」のファウンダー、幸田フミさんだ。

 「忙しくて服装や天候に悩めない」女性にとって、オフィスや役員会議、会食など、あらゆる場面で失敗しないバッグが必要になる。フミコダは収納力や自立性、持ちやすさが売り。人工皮革で作るため、雨でも安心だ。機能性だけでなく、暗くなりがちなジャケットスタイルに華やかさを添える、エレガントな見た目にも配慮している。

 人に語れる物作りも強みだ。商品は動物の皮革やプラスチックを使わず、東京・墨田の職人が作る。日本の伝統工芸も取り込み、職人技の継承にも貢献している。物作りの背景やサステイナビリティー(持続可能性)の意識が、エグゼクティブ女性の共感や関心を引き寄せ、中心価格10万円前後のバッグが売れている。

 月に1度、セミナーも開く。15人ほどの顧客が集い、ビジネスで役立つ情報を共有、同じ立場で働く女性の交流を促している。百貨店の期間限定店では幸田さんが登壇してトークショーを行う。こうしたソリューション提案や、作り手の見える安心感が信頼につながっている。

「フミコダ」ファウンダーの幸田フミさんが持つのは定番のショルダーバッグ「アリアナ」

(繊研新聞本紙19年3月12日付)



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