小売企業の採用活動では、最前線で働く販売員の素質があるかが選考の重点となる。気配りができるか、相手の話に耳を傾ける誠実さがあるかなどだ。職種をいくつか設け、キャリアアップできる研修、制度も充実。ライフステージの変化に応じて長く働ける環境の整備にも力を注いでいる。
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キャリア描ける研修を充実
「人を思いやる文化が自社の良さ」とは、ストライプインターナショナル専務取締役管理本部長兼CFO(最高財務責任者)の張替勉さんだ。新卒採用では、販売員に必要な人間力があるか、学生の素顔を引き出す面接を心がけている。〝企業リポート〟の提出で、企業理解を深めてもらう取り組みがユニーク。働きがいをアピールするため、研修制度に力を入れている。今後は海外留学生の採用も少しずつ増やす計画だ。
風通しの良さが魅力
――面接で重視するのは。
二つあります。一つは感性を持っているかです。ファッションセンスに加え、アートを味わう豊かな感性も含みます。もう一つがとても大事で、他者への思いやりがあるかです。接客ではお客様のニーズを聞く力は絶対。最終面接では、他の学生が質問に答えている時に相づちを打っているかなどを見ています。
緊張する場面でも、販売員には自分から話しかける姿勢が問われます。最終面接では、自社やアパレル業界への志望理由のほか、「今日のファッションのこだわりは」と聞きます。残った時間は学生が自由に質問する時間に充てています。
――特徴的な選考方法は。
最終面接を受ける学生には〝企業リポート〟を提出してもらいます。実際に店舗で販売員に仕事のやりがいや日頃の業務を聞いたり、企業サイトやECなどを見てもらったりし、その調査結果や感想を書いてもらうもの。体裁や字数は自由なので個性が良く出ますね。最近は、自分の意見や提案を書いてくれる学生がおり、感心しています。
企業リポートの作成で店舗に行った学生からは、スタッフが快く、丁寧に受け答えしてくれて感動した、との声を聞きます。
年2回の社内調査で「失敗して気分が落ち込んだ時や、困難な時にどう乗り越えられますか」との設問に対し、断トツに多いのは「助け合い」との回答。苦しい時でも自分を見てくれている上司や同僚がいる安心感や、居心地や風通しの良さが自社の魅力とする従業員が多いです。
学生も、みんなが声を掛け合う雰囲気を店舗で感じてくれているようです。「セカンドファミリー」を掲げ、人を大切にし、尊重する文化は学生からも評価されています。
外国人採用を積極化
――新卒採用の現状と25年度の見通しは。
24年度は総合職と地域限定職を合わせて220人を受け入れる予定で、ベトナムからの留学生も1人入社します。今後は外国人留学生も積極的に採用していかないと、日本国内の少子化に対応していけません。25年度は250人の採用を目指し、そのうち外国人留学生は10人ほど採りたいです。
――今後の課題は。
キャリアパスを示し、研修を充実すること。会社がちゃんと一人ひとりのステージアップを考え、それを支えるんだとの意思表示をしていく必要がある。離職率のさらなる低下にも期待しています。
24年度は研修プランをすべて組み替えました。例えば、3カ年での成長を見据えた半年ごとの研修といった具合に、ストーリー性を意識しています。今まで分けていた採用と教育も一つのチームにしました。
今後はベテランならではのスキルを生かせる組織を作りたいとも思っています。結婚し、子供を育てながら長く働いてくれている従業員が、キャリアや年齢を重ねて培った販売力や経験を、例えば接客指導やメンタル管理に発揮する。おのおのが得意分野でプロフェッショナルとして働けるチームが全国にあれば、従業員は安心して働き続けられますし、学生も長く働く想像ができるのではと思っています。
■会社概要
- 連結売上高:1008億円(23年1月期)
- 主要ブランド:「アースミュージック&エコロジー」「アメリカンホリック」「グリーンパークス」「イェッカヴェッカ」など
- 店舗数:国内連結1158店。東南アジア、台湾にも出店
- 社員数:2494人(ストライプ単体、23年12月)
(繊研新聞本紙24年2月20日付)