【販売員のやりがいってこんなところ】マリメッコ渋谷店店長 瀬尾早紀さん 空間作りとおもてなし

2024/05/16 00:00 更新


ともに働くスタッフらも元気をもらうという明るい人柄が魅力の瀬尾さん

 わざわざ店舗に足を運ばなくても、手軽に買い物ができる今。試着をしなくても、サイズ感や素材感を伝えられるツールがどんどん発達するなかで、来店の動機となるのは「あの人から買いたい」と思う販売員の存在だ。優れた商品知識だけでなく、心をつかむ提案や親近感のある接客が、ファンを生む。

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「好き」を共有できる幸せ

 「マリメッコ」が好き――新卒入社の面接の際からその言葉で、装いで表現してきた瀬尾早紀さん。持ち前の明るく前向きな人柄で、ともに働くスタッフにも元気を与える〝花〟のような存在だ。「買う、買わないは関係なく、また来たいと思ってもらえる店舗作り」を目標にしている。

ファンから〝顔〟に

 瀬尾さんは、今年でちょうど入社10年。マリメッコを知ったのは、文化服装学院に通っていた学生時代だ。「元気になれる」プリント柄などのとりこになり、就職活動はマリメッコを擁するルック一筋で面接を受けた。配属のブランドは入社後の決定だったが、面接官だった人事課の社員の優しい人柄を感じ、「この会社だったらどのブランドでも頑張れそう」と入社を決めた。

 販売職は新卒から3年間、メンターとして一人ひとりに人事課のトレーナーが付く。安心してキャリアを進められ、入社から約2年間は他のアパレルを中心としたインポートブランドで勤務した。16年7月、晴れてブティック事業部マリメッコ課に異動となった。キャリアとしては3店目。21年7月から渋谷店の店長を担う。渋谷店を含め、2店は新店舗のオープニングスタッフを務めた。

 店長になっても、日々の業務は接客が中心。「お客様へのお声掛けから始まり、お薦めしたり、ギフトの梱包(こんぽう)をしたり、掃除や整理整頓などの細かな作業も」怠らない。洋服やバッグ、食器、インテリアなど各カテゴリーに担当者が割り振られており、発注作業はそれぞれの担当者に任せることも。

 瀬尾さんが店長として注力するのは、スタッフ間の情報共有や、フランクに話したり相談しやすい雰囲気作りだ。「自分の考えや価値観をぐっと押し付けないこと」。全ての疑問や意見に耳を傾け、新しいやり方をどんどん取り入れていく。日々、スタッフが心地良く働ける環境を心掛けている。

 一人ひとりを尊重し、サポートし合う関係性は売り上げにもつながっている。全社で、個人売り上げよりも店舗での売り上げ達成を重視しているため、チームプレイで売り上げを獲得するスタイル。その時々によって、納品をさばいたり、ストックにこもって作業したり、人によって役割が異なるからだ。

出会い、発見が活力

 客と向き合う際、常に抱いているのは、魅力的な商品を「お客様に知ってほしい。可愛くないですか? これ良いですよね!」という、うそのない気持ち。ECでいつでもどこでも買い物ができる時代に、「このお店で働いているからこそ出会えるお客様」を大切にする。誠意と愛情を持って提案し、客からもたくさんの新しい発見を得られることが、やりがいであり魅力になっている。

インバウンドが多い渋谷スクランブルスクエアに構える渋谷店

 仲間の存在も大きい。自分と同じように、ブランドが「好き」で働いているスタッフが多いため、共感・共有できるのが何より楽しい。好きなブランドの空間で働けていること自体、幸せなことだ。

 店頭に立つ際は、マリメッコの新作をメインにまとう。だが、他ブランドと一目でわからない無地のようなものであれば、コーディネートに取り入れても良い。スタッフらは個性が出しやすく、客にもよりリアルな着こなしをコーディネートで体現できるメリットがある。

 家に持ち帰る仕事でないため、休日や退勤後は切り替えてしっかり休む。「オンオフが付けられる」のも販売職ならではだ。今後も「ブランドイメージをしっかりアピールできるような着こなしや提案を、自分自身を通して伝えていきたい」としている。

■ここがすごい!

 「的確なアドバイスをくれ、必ずモチベーションを上げてくれる。入社時から堂々としていた。10年間、辛い顔を見たことがない」(先輩)

「いるだけで周りが明るくハッピーになる。いつも『何かあった? 大丈夫?』と気に掛けてくれて、話しやすく、聞いてもらいたいと思う環境を作ってくれる」(同期)

「スタッフだけでなく、館や会社の人など周りを巻き込む力もある。瀬尾さんを採用、教育してくださった人事の人にも感謝です」(後輩)

(繊研新聞本紙24年5月16日付)

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