EC販売の利用が増えているが、実際に店に足を運び、商品を見て、触って購買したい客も多い。販売職にとって、やりがいと接客技術の発揮しどころでもある。日々のスキルアップに努めながら、寄り添った接客や共感してくれる客への販売に魅力を感じている。
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店頭での接客で「お客様からお褒めの言葉をもらった数が全国で一番多い(入社5年以内)」のが志賀友美さん。22年に副店長に就任し、AOKIの強みである「カスタマーファーストの精神」に磨きをかけるとともに、新人に伝える努力も惜しまない。
人と関わる仕事
元々アパレル関連だけでなく、介護など「人と関わる仕事がしたい」との思いから、AOKIのインターンシップを体験した際、「先輩社員や人事部の担当者の人柄に触れ、働いてみたい」と考え、19年春に新卒で入社した。入社半年でレディスコーナーを任されるなど、これまで半年から1年に1回のペースで千葉県内の店舗を異動し、今年1月から6店目となる千葉稲毛海岸店に配属。各店舗とも客層が異なり、社員やパートナーの構成も違うため、毎回、新鮮な気持ちで仕事に臨めるという。
主力アイテムがスーツのため、フレッシャーズ商戦の1~3月に来店客が集中する。その時期は常に店頭で接客しながら、空いた時間には商品の入荷や店頭の整理に追われる。繁忙期なので入荷する商品量も通常の数倍になる。フレッシャーズ商戦では、大学への新入学・新入社の10~20代前半の若い世代が人生で初めて購入するスーツ〝ファーストスーツ〟を求めて来店するため、スーツの着方からビジネスマナーまで問い合わせも多いという。
朝早くに来店した就職活動中の女子大学生から「パンツスーツを購入してすぐに着用したい」と要望されたとき、急いで裾上げ対応できるか、など親身に相談に乗っているうちに、その学生が就活の悩みや不安な気持ちを打ち明けてくれた。さらに「なぜ、ここで働いているの」「今、楽しく働けているんですね」と声を掛けられた。志賀さんは当時、仕事に悩んでいた時期だったので、互いに励まし合い、逆に勇気と元気をもらえた。「洋服を通してお客様の人生の節目に立ち会え、サポートできるのが接客の魅力だ」と強調する。
予想外の出会い
来店する客の期待を越えられるような接客・サービスを常に考えている。接客への評価はその場で数値では表れないかもしれないが、客の表情をみれば分かるはず。笑顔になったり、直接「ありがとう」と喜びや満足を伝えてくれたりするのが、対面販売の良さでもある。タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスの高さだけを求めるなら、ECを利用した方が良いかもしれないだろう。だが、リアルな場(店頭)に来店した客が接客という「人と人とのコミュニケーションを通じて予想外の商品やスタイリングに出合えるのが大きな魅力。装う楽しみを提供できるのがやりがいにつながる」と考えている。
さらに顧客満足度を高めるには、具体性と論理性に優れた接客力に磨きをかける。志賀さんはベストを尽くしているつもりでも、感覚的な説明になりがちなので、「なぜ、この服が似合うのか」の根拠を明確にしながら説得力のある接客をすることが課題だという。自分の着方を理解している客も多いため、それを踏まえたうえで新たな「感動」を提案しなければならない。そのためには、商品知識や会話力を含め、引き出しが多ければ役に立つ。
「就活中にいろいろな企業を見たが、当社ほどスタッフ全員がカスタマーファーストの精神を体現している企業はない」という志賀さんは、この間、異動した各店の店長からもその考えを徹底されてきた。この思いを新人のパートナーなどにも伝え、波及していくためにも、今後は人材教育にも力を入れたい。「人に教えることで自分の理解も深まり、初心に返り、学び直すことにつながる」と未来を見据える。お客様の記憶に残るような共通のおもてなしによって、販売スタッフのファンが店舗のファンになり、結果的にAOKIのファンになっていく。
■ここがすごい!
「入社5年にもかかわらず、お客様のニーズを的確にとらえ、ご要望に合わせた商品・スタイリングを提案し、お客様からお褒めのお言葉をいただくことが多い自慢のスタッフです。お客様満足を常に追求する姿は、ストアマネジャーや店舗スタッフからの信頼も厚く、またムードメーカーとしても店舗を支えてくれる頼れる存在です」(AOKI 事業部営業部東日本第二ゾーンエリアマネジャー 三枝邦嘉氏)
(繊研新聞本紙24年6月19日付)