大手セレクトショップで、米ニューヨーク発祥ブランドの導入が増えている。トレンドを意識せず、上質なベーシックの提供で支持を得ているブランドだ。現地と同じ品揃え、内装のショップを日本で出すことで、自社の既存業態だけでは捉えきれない客層を改めて取り込もうとする狙いがある。
ベイクルーズのJSワークスは7日、「セーブ・カーキ・ユナイテッド」の1号店を表参道にオープンした。店内に並ぶのはブランド名の由来でもあるチノパンのほか、カットソーやシャツなど。米国製にこだわり、無駄をそぎ落とした通好みのベーシックアイテムが特徴だ。
店ごと手掛けてノウハウを蓄積
数年前からJSワークスが運営する「ジャーナルスタンダード」で仕入れブランドの一つとして販売していたが、売れ行きが好調だったため、今春から独占輸入販売権を得た。ジャーナルスタンダードの店でも扱う一方、単独店も今後3年で10~15店まで増やす計画だ。
「やってみて、色や素材のバリエーションを含め、この価格帯で、こういう定番だけを集積した店があまりないことが改めて分かった」と塚田裕介COO(最高執行責任者)は話す。自社のストアと並行してセーブ・カーキの店も出す決断には理由がある。
自社のストアで同質化に抗い、差別化に取り組んではいる。ただ、ファッション市場全体で供給過剰が続き、「トレンドに関係なく、良い商品を選びたいという大人客は疲れている」。自社とは違うアプローチで支持されている海外ブランドを、丸ごとショップ形式で手掛けて新たなノウハウを蓄積し、「自社のもの作り、品揃え、売り方にも生かしたい」考えだ。
商品、見せ方に新たな気付き
ユナイテッドアローズは「スティーブン・アラン」を日本で運営する。現在4店あり、うち3店は「ビューティ&ユース・ユナイテッドアローズ」と隣接した店だ。松崎善則BY本部長は「当初の見込みより、売り上げは好調。まだ伸ばせる」と言う。
出店規模が広がる中、新しい切り口を「既存業態の再編集やオリジナルのレーベルで見せるだけでは、同質化になる」と考え、もともと仕入れで販売していたブランドで「ニューヨークにある店を日本にそのまま持ってくる」ことにした。
日本市場で「ベーシックで品が良いファッションへのニーズが高まる兆しがあった」ことも後押しした。アイコン商品のシャツなどはサイズを日本人向けに修正するため、ビューティ&ユースの企画担当が商品のライセンスを兼務することにした。
「ビューティ&ユースのオリジナルは、トレンド商材への優先順位が高い。ベーシックにこだわるスティーブン・アランのライセンスを同じ人材が担当することで、その違いを意識して企画するようになり、すみわけが出来た」。現在ではシャツ以外の日本企画も生まれ、本国に逆輸出されるケースもある。
商品だけでなく、「決して探しやすくないシャツの棚や、オリジナルを主体にしながらでも、仕入れ商品が際立つ見せ方など、セレクトショップの売り場ってこうだよねっていう気付きが得られた」という。今後はビューティ&ユースと隣接しない立地を含め「年1店ペースで主要都市に出したい」考えだ。
(繊研 2015/03/18 日付 19200 号 1 面)
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