繊維・アパレル業界はサステイナブル(持続可能性)な産業に向けた構造改革を迫られている。今、業界に必要なことは企業やそこで働く人々の「つながり」を創ること。コロナ禍を経て露わになったのは、従来型のサプライチェーンでは限界を迎えていることだ。生産者や事業者が相互に且つ能動的なつながりを持てる環境の構築が、業界の喫緊の課題となっている。相互が自由につながりを持つことにより、業務効率を上げることはもちろんのこと、新しい取引の創出や新たな事業が生まれる可能性がある。繊維商社ヤギとシタテルに、今後のアパレルビジネスにおけるプラットフォームの可能性について語ってもらった。
「変える」機運高まる
――コロナ禍で見えてきた業界の課題は
樺島氏/ファッション業界は企画や生産など各段階において、それぞれの職能者が高い技術を持っており、分散して存在している特性があります。しかし、コロナ下においては、対話や対面による情報取集に制限があるなかで、新しいコミュニケーションツールを使って、如何にそれをカバーするかが喫緊の課題として浮上しました。コロナ禍を通じてODM・OEM(相手先ブランドによる設計・生産)では、以前にも増してQR・多品種小ロット対応が求められています。更に円安とコスト高、物流費高が追い打ちを掛けています。そのなかで、私たちはサプライチェーンに携わる多くの職能者の能力を最大限引き出しながら、最少人数で最大の効果を発揮することが求められています。そのためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)による事業の効率化を図ることが不可欠です。今、業界全体として「変えなきゃいけない」とする前向きな機運が盛り上がっています。
林田氏/衣服・ライフスタイル業界はアナログで属人的な産業だと言えます。業界に携わる人々はそれぞれが“突き抜けたプロフェショナル”です。サプライチェーンのなかで各職種のスペシャリスト達が、各ポジションにおけるノウハウや専門領域の情報を持っており、このものづくりに必要な情報がサプライチェーン全体に分散しています。それ故にコロナ禍において、対面による情報共有が難しくなった際に、従来の情報伝達において支障をきたすことが露呈しました。個々の優れたプロフェッショナルを、デジタルのプラットフォームを活用して“つなげる”ことで、各人の持つ、優れた“属人性”を生かす産業の構築が必要になっています。
即効性と効率性
――業界変革に「シタテルクラウド」はいかに貢献するのか
林田氏/シタテルクラウドで行うものづくりの特徴として、“即効性”をあげることができます。このクラウドサービスの背景に約1500のサプライヤーネットワークを保有しており、それを活用することができます。ユーザーは既存の生産背景とともに新しい生産工場と新規取引をすぐに開始できます。小規模事業者や、アパレル業界に新規参入する企業にも活用してもらえます。このサービスを使うことで、当社で厳選したサプライヤーを直ぐに活用し、発注~生産まで行えるメリットがあります。
今、当社のシタテルクラウドを導入する企業は着実に増えています。ユーザーが拡大すると同時に、このプラットフォームを創造的な世界の実現のために、磨き続けなければならないという思いを強くしています。生産業務における効率化のパフォーマンス向上やサステイナブルなものづくりを支える仕組み、実際にクラウド上で購買可能な商材の拡充も今後も積極的に行っていきます。
樺島氏/コロナ以前から業界は縮小していましたが、コロナ禍を通じて、いよいよ従来型の業界構造の非効率な多重構造では成り立たない場面が多く現れており、DXによる効率化が不可欠な状況になっています。
当社は、シタテルクラウドに対しては、アパレルOEMでの活用に加えて、営業以外の部門との連動にも注目しています。具体的には物流と連携することで業務の効率化を図ります。生産と物流部で生産、検品、輸入、通関、出荷などの情報を共有できるヤギ・オリジナルの仕組みを、現在構築しています。生産から物流までの一連の状況を集約して“見える化”することで、属人的な業務内容を飛躍的に効率化することができます。
ワクワクする業界に向けて
――今後、シタテルのプラットフォームが目指すものは
林田氏/アパレルに関するユーザーのニーズを当社のプラットフォーム上で全て完結できるようにしたいです。これを実践するためにもヤギ社をはじめとする他社との連携で実現していきます。
シタテルが最も重視するのは、多様な衣服・ライフスタイル製品を生み出し続ける仕組みづくりです。今、業界では多種多様なDtoC(メーカー直販)ブランドが勃興して活躍しています。これら多品種小ロットを求めるブランドに対してもシタテルクラウドを提供することで、相互が自由なつながりを持ちながら効率的且つ能動的な取引を生み出し、産業そのものをサステイナブルなものにしていくとともに、「皆がいろんなファッションを自由に楽しんでいいよね」というファッションマーケットの創出を目指します。
樺島氏/今、ファッション業界のプレイヤーは、ワクワク感や自信を感じづらい状況が続いてしまっているかもしれない。我々ヤギとしては、業界を持続可能な形でもう一度ワクワクしてもらえる・自信を持てるようにしようと前を向いています。私達、商社は業界のイノベーションの一翼を担う責任があるはずで、その中ですべき事の1つとして当社はこれからもDXに向けて、踏み込んでいく構えです。
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