うっかりして、気づけば2カ月も経ってしまいました。年も変わりましたが、この間に何度か同じ言葉に出会う体験をしました。そのお話をさせていただきます。
ある日、長年の取材先で、社長がいろいろと怒っていました。一つは、昨年末までテレビや一般紙が「高額品が売れている!」と報道していたことです。社長の主張は、「確かに、高額品は売れているけれども、それだけが売れているのではない」というものでした。
「百貨店の広報に、高額品が売れてますか?と聞けば、まずは、イエスと言うに決まっている。それ以外の言葉を言わせず、それだけが事実かのように仕立てるんだ!!」。怒りは収まりません。
「自分たちの言いたいことだけニュースにするマスコミと違って、業界のことを正確に書くのが、繊研さんの役割でしょう?」と続きました。
この場合、高額品だけが売れていて、「他は駄目みたいよ…」という感覚が、うっすらとでも消費者に刷り込まれることが怖い訳ですが、このマスコミの影響力の大きさを繊研新聞が抑えられるとは社長も考えてはいません。ただ、BtoBの世界では、少なくても中立的に、点だけでなく面としてとらえた事実を書いて欲しい、ということだと思います。
もっと言えば、「そうそう、そうなのよ。わかってるね~」という納得や共感を業界専門紙には求めたい。大新聞やテレビが暴走しても、「表面でなく、題材の裏側からも底からも、奥行きを持って、しっかり書いてくれないと、困るよ」。という意味であり、現在の繊研新聞が、それに応えきれていないことへの不満でもあります。
私は、そうしたご要望・ご意見への対応ができていないこと、また、遅いこと、変化が見えにくいことをお詫びしつつ、困っていました。期待をかけられている、とも言えますが、厳しい激励に身が引き締まる思い、というよりは、穴があったら入りたい。できれば、この場から立ち去りたい気持ちの方が強かったからです。
しかし、社長は「マスコミのレベルの低さは今、始まったことじゃない。レベルが高かったら、あんな戦争は起こってないんだから」とも言い、マスコミは単なる野次馬と言い切ります。
結局は、野次馬とは異なる役割を果たせるよう、がんばるように、と励まされて帰ってきました。
また、別の日。まだ30代前半の若き経営者の取材でした。雑談の中で、弊社が主催するJFWインターナショナル・ファッション・フェア(IFF)の話題が出ました。グローバルに活躍されている方で、昨今の世界の見本市事情からすると、いわゆる大型の総合見本市はどこも厳しいし、IFFもきっと、そうでしょうね、と心配してくれます。
「でも、繊研さんは簡単にはやめられないですよね。出展者が最後の1社になるまで、続けないと。それが、繊研さんの役割ですもん」。そう言って、何か協力できることがあれば、とおっしゃいました。
一般に、他者から自分の役割を決めつけられると、不愉快なものですが、自分でも気づいていないようなところを発見してもらったり、心の深いところを察してもらったりすると、ありがたいと思うものだなぁ、とつくづく感じたしだいです。
私個人としては、繊研新聞は、ファッションビジネスの良き応援団であるべきだと考えています。これは経営方針にある言葉でもなんでもなく、20年とちょっと仕事をする中で生まれた私的な考えなので、社内で突っ込みが入るかも知れませんが、少なくても、私は良き応援団員になりたいと願っています。
できるだけ、選手たちの気持ちが盛り上がり、試合に勝利する応援。力いっぱいの大声だけでなく、時にはクールで適切なヤジも良いかも知れないし、趣向を凝らした拍手や花束も必要かも知れません。
その技を磨き、成長するためには、すべきことがたくさんあります。これまで、間の悪い応援で調子を狂わせてしまった数々を思えば、反省するだけでは足りません。しかも、選手たちに応援されることさえ多いのです。改めて、できる限りのことをしたいと考えています。
わかさ すみこ:総合1面デスク。92年入社、東京営業部配属。95年から大阪編集部、テキスタイルトレンドなどを担当し、2010年から商品面デスクとともにファッショングッズ分野などを受け持つ。北海道出身。これから、デスクのひとりごと的レポートを始めますので、よろしくお願いいたします。