あまり知られていませんが、世界的に見て日本の帽子の素材、ものづくり、クリエイションはなかなかのものです。もちろん、ヨーロッパなどのような産業としての歴史は長くありませんが、日本の職人やクリエイターが世界を支えている部分があります。
帽子の世界的なコンテストは各地にあります。著名なのはフランスのコサッド・セッフォン(南西部で麦の帽子産地)と同じフランスのリヨンのコンテスト。リヨンには帽子博物館があり、ここに収められるのは大変名誉なことです。
コサッドにも今年、帽子博物館ができました。そのオープニングイベントを飾ったのは、日本人クリエイター、平野徳太郎さんです。通常なら、フランスやイギリスのクリエイターが手掛けるのでしょうが、平野さんの長年にわたる功績が考慮されたようです。
平野徳太郎さん
平野さんと彼のスタジオは2000年からヨーロッパのコンテストに出品しており、毎年受賞し、その数は主要なものだけでも37作品に及びます。今やコンテストで日本人が受賞するのは当たり前となっています。
平野さんのスタジオが得意とするのは、スパートリー(バクラム)やパラブンタル=いずれも植物系の高級素材。以前はフランスでも扱われていましたが、最近は見ることもないそうです。スパートリーは素材そのものが希少になり、日本のごく一部にしか残っていません。
コサッドのイベントでは、これらの扱い方、帽子製造を伝えるというのが目的でした。日本人だけでなく、世界に技術を残しておこうという発想です。
岡山県の南西部、笠岡市に石田製帽というメーカーがあります。幅5ミリ以下という極細の麦ブレード帽子のメーカーとして知られます。
3ミリを切るようなものですら縫います。しかも、目を奪われるような美しい仕上がりです。この極細麦のブレードで2.5ミリや3ミリのものはもう入荷しません。石田製帽の倉庫に保管されているくらいといいます。素材が貴重な上、ここでしか縫えないという麦わら帽が、ここから生まれています。
※詳しくは、28日付けの繊研新聞社で。繊研plusでも一部紹介しています。
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