アングリッド SNS映えする家をプロデュース

2017/03/31 18:21 更新


【販売最前線】インスタグラマーによるインスタグラマーのための家 衣、食に続きライフスタイルを提案

 衣料品不況の中で、包括的なライフスタイル提案がファッション業界全体の課題となっている。食分野に進出する企業やブランドは多いが、その次の一手として、“住”への注目も高まっている。

こうした流れを受け、マークスタイラーのレディスカジュアル「アングリッド」は、東京・神楽坂の中古マンション1戸をリノベーション(リノベ)して売り出す。同ブランドのコアターゲットは24~28歳だが、30代客も多く、ちょうど住宅購入を考える世代だ。SNS(交流サイト)への意識の高さなど、アングリッドならではの視点を盛り込んだ家で、ブランドの世界を発信する。

(五十君花実、写真=加茂ヒロユキ)

■SNS映えする家■

 住宅というと、かつては「中古は不安」という価値観が一般的だった。しかし、ファッションで古着やリメイクが見直されているのと同様に、最近では「中古物件を自分好みにリノベする方がおしゃれ」という考え方が広がっており、中古マンションのリノベはいま注目の市場だ。

 今回の物件は、リノベ住宅に特化したオンラインマーケットの「カウカモ」(ツクルバ)とアングリッドが共同でプロデュースしており、カウカモ上で売り出す。購入者として共働きの夫婦をイメージし、そのライフスタイルを細かく想定。アングリッドディレクターの高園あずささん自身の生活から生まれるニーズも色濃く反映した。その結果生まれたのが、室内のどこで写真を撮っても絵になるという、まさにSNS時代のための家だ。

 物件に入ると、玄関の土間が一般的な間取りよりも広いことに気付く。また、通常は寝室の奥にあることが多いウォークインクローゼットに、玄関から直接出入りできる。「インスタグラム」などのSNSにコーディネート写真をアップすることは、高園さんやアングリッド顧客にとっては当たり前。しかし、「多くの人は家の中にラグを敷いて、その上に靴で立って鏡の前で自撮りしている。それだとインスタ映えしない」(高園ディレクター)ことから、土間を拡大し、靴のままで写真が撮れるようにした。「玄関の鏡でコーディネートの最終チェックをすると、やっぱりバッグはあれがいいと思うことがしょっちゅうある」が、クローゼットが隣なのですぐに対応できる。

玄関横にウォークインクローゼットがあり、その奥が寝室。玄関でコーディネートを変えたくなった時に便利。モデルは高園ディレクター

玄関の土間スペースを広く取り、靴をはいたまま自撮りできるようにした

 廊下の壁は、木材に絵や写真が掛けられていてギャラリー風の作り。反対側の壁は白く、どちらを背景に写真を撮ってもフォトジェニックになるうえ、白い壁にはレフ板効果も期待できるという。将来的に子供部屋としても使える書斎は、ショップ店頭を思わせる大きな窓がポイント。窓の前にハンガーを掛けられるラックがあり、お気に入りの服を飾って“見せる収納”ができる。

斎はショップ店頭を思わせる大きな窓で“見せる収納”に。床材のマットな質感にも注目

 「飽きがこないように」と、キッチンやリビングの壁や床は全体的に明るいトーンに仕上げた。食事の写真を撮る際に、暗いと写りが悪くなるという理由ももちろん込められている。

 こだわりが多数つまっているが、地味ながら一番スゴイと感じたのが、床にマットな木材を採用している点だ。単に好みの問題かと思いきや、「ニスが厚く塗ってあると、物を床に置いて写真を撮った時に反射してきれいに撮れない」からだという。これぞインスタグラマーならではの視点。不動産業者やリノベーション業者からは、おそらく生まれないアイデアだ。

リビングダイニングは明るい空間に仕上げ、食事の写真がきれいに撮れる。窓際にはグリーンが置きやすいよう、モルタルのインナーテラス


共働き夫婦を想定し、あわただしい朝の身支度のために洗面台は2つ。木枠の鏡もオリジナルで制作

■次のプランは“旅行”

 物件は3月中旬に完成し、現在プレス関係者らに向けて内覧を行っている。雑誌やカタログの撮影場所としても貸し出し、ブランディングにつなげる。一般向けの内見は4月17日から開始する予定だ。今回の反応を見て、アングリッド流のリノベプランをパッケージ化して売り出すことも模索するという。

 同ブランドは16年8~10月に、パンケーキ専門店と組んで代官山にパンケーキカフェを出店、食分野からのライフスタイルへのアプローチは既に行っている。「360度のライフスタイル提案を目指しているが、店頭で表現しようとすると、どうしても郊外型のような大型店舗が必要になる。そういう形以外での提案がしたい」(中見川宜紀アングリッド事業部長)という思いが、パンケーキカフェや今回のリノベマンションにつながった。「衣、食、住の提案をしてきたので、次は知や遊、健といったキーワードを考えている」。旅行会社と組んで、“思わず写真を撮りたくなる旅行”のプロデュースなどが候補にあるという。

■物件情報


住所=東京都新宿区弁天町

アクセス=都営大江戸線牛込柳町駅から徒歩3分

間取り=2LDK+WIC

広さ=65.63平方メートル

築年月=98年10月

価格=6280万円

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