《米国のデザイナービジネスはどこへ④》ショールームと合同展の未来は

2020/08/15 06:28 更新


 デジタルショールームの躍進が目立つが、では従来型のショールームと合同展はどうなっていくのだろう。例年8月に開催される合同展が10月に延期されたが、11月初めのニューヨーク・マラソンも中止になったことを考えると、10月に合同展が実現可能か疑問に思う。

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 従来型のショールームは、ライブストリーミングを通じて、バイヤーへリアルにパーソナルにディテールを伝えることが必要になってくる。デニムの合同展のキングピンズは既にデジタル版を2回、2日間ずつ開催し、いくつかのメーカーの宣伝動画やパネルディスカッションなどを流した。しかしそれがオーダーにつながるとは思えないし、2日間延々と動画を見ていることもあまり生産的でない。ザ・ニュースはプレスプリングはデジタルで見せ、7月のメンズは対面式とデジタルの両方で見せる予定だ。

 一方、ショールーム「デニス・ウイリアムソン」とセレクトショップ「180ザ・ストア」の創業オーナー、デニス・ウイリアムソン氏は、「ショールームは出張に来られないデザイナーたちにとって、市場にいるために重要だ。日本のデザイナーを多く扱っているが、彼らは出張に来られない。バイヤーも日本に行けない。サンプルの送料はコロナ前と変わらない」と、ショールームで手に取って見られる機会の重要性を強調する。デザイナーにはルックブック、動画、ビデオカンファレンス、スワッチなどデジタルコンテンツの充実を勧め、デジタルと従来型を併用していく。

 さらに気になるのは、生産量と納期、売り場がどう変化していくかだ。不透明な状況が続くから、在庫を増やさないことに神経を使うだろう。「3.1フィリップ・リム」のウェン・ゾウCEO(最高経営責任者)は、「かつてないくらい、店に置く商品についてよく考えているし、より少なくより意味のある、よりインパクトを与えられ、より求められる商品を心掛けている。私たちはみんな、今まで以上に毎日の生活の中に美しさを必要としている」と語る。

 ウイリアムソン氏も、「ここ1、2シーズンは大きなコレクションをつくらないで、在庫を最小限に抑えることに焦点を当てるべき」と話す。180ザ・ストアでは、販売期間が長い商品を少しずつ、客がすぐ着られる時期に合わせて出していく。

 当面はそれでやりくりするとして、数年後にはどうなっていくのだろう。「マーケティング界のノストラダムス」の異名を持つフューチャーリストのフェイス・ポップコーン氏は、「ショールームは小さな温室のような隔離された場所か、屋外のスペースを持ちバイヤーが服を触ったり着たりできるようにする。抗体のある人とそうでない人で、異なるショールームを持つようになる」と予測する。「そのような予算があるショールームはないのでは」と問うと、「だからファッションは大変なのだ。業界が古いやり方にしがみついている」との答えが返ってきた。ポップコーン氏は、当面はプレキシガラスなどで仕切り、いずれコロナを感知するアプリを利用することがニューノーマルになるとみる。

 ポップコーン氏は合同展について、ずばり、「いずれなくなる。危険過ぎるから」と断言した。デジタル合同展に1本化され、そこで鍵を握るのはAI(人工知能)だ。「将来のデジタルバーチャル合同展は、バーチャルリアリティーのワンダーランドにいるかのようになる。バイヤーの好みとサプライズや突発性を効果的に取り入れたアルゴリズムを元に、新しいブランドを見つけられる様々なテクノロジーに魅了されるだろう。もしバイヤーがサステイナブル(持続可能)なファッションに投資しているなら、AIはそれを知っていて、新しい発見に導く」とポップコーン氏は説明した。

ショールームとセレクト店を手掛けるウイリアムソン氏

(繊研新聞本紙20年7月8日付)

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