《視点》哲学が顔になる

2021/11/16 06:23 更新


 近所に二つのナチュラル系スーパーがある。一つは大手外食産業の子会社、もう一つは自然派一筋50年の老舗だ。生鮮食品から加工品、乾物、スイーツ、日用品まで、どちらもこだわりの食材が揃っている。いずれの店もきれいに整えられ、商品に遜色はない。しかし確実に違いがある。かなり近い品揃えなのに、面白いほど店の表情が違うのだ。

 その理由は一目瞭然だ。それは店員の働き方にある。いずれのスタッフも穏やかで親切だが、大手はマニュアル重視で、店員それぞれの考え方は見えてこない。一方、老舗は店員それぞれに自然派商品に対するこだわりがあるようで、聞けば丁寧に答えてくれて、会話が生まれる。

 商品の魅力を自分の言葉で話してくれるところに、企業の哲学がにじみ出る。きっと、スタッフ全員が自信を持って働くことを重視しているのだろう。スタッフそれぞれの個性が店の活気につながっている。それが共感と信頼を生み、店に通うようになる。大手の方が駅に近いにもかかわらず、地元のファンが通い続ける理由はその辺にありそうだ。

 良い品揃えだけを求めるのならECで間に合う。それぞれの考えを自分の言葉で伝え合う交流こそ、実店舗の魅力だし、その方が断然楽しい。それはファッションの店も同じだと思う。

(規)



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