昔、会社のトップが覆面で業務の現場に入り込む「ボス潜入」というドキュメンタリー番組があったが、先日、それを地で行く人物に出会った。ある小売りチェーンの再建を託され外部から招へいされた人で、入社後半年は赤字を止める応急処置策に取り組んでいたが、それらが一区切りつくと、営業現場に飛び込み、販売員として勤務し始めた。
100以上ある店舗の中で、彼が選んだのは不振店。そこで現場の社員・パートスタッフと汗を流し、諸改革を実行する。例えば、販売員の付帯業務を減らして接客に専念できるようにしたり、シフトの組み方を見直して来店客が増える時間帯に人員を手厚くしたり。その結果、わずか数カ月で買い上げ率を他店の倍にしたという。
今後は同店の成功を横展開することが課題になるが、現場に入って良かったのは「既存の評価体系で埋もれてしまっていた優秀な人材を発掘できたこと」という。「現場百遍」とよく聞くが、トップと現場の距離が縮まることは確かに重要だと知った次第だ。
(潤)