【VR×ファッションの先④】プレーヤーの行動を捉える

2020/01/05 06:27 更新


【VR×ファッションの先④】≪基盤作り≫プレーヤーの行動を捉える

 アバターのファッションが市場となるには、アバター所有者の人口と作り手のツールが必要だ。その基盤作りに、創作活動支援のピクシブが「VRoid(ブイロイド)プロジェクト」で18年から挑戦している。目指すのは、クリエイターがバーチャルファッションの分野で生計を立てられる世界だ。

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■消費だけでない

 マーケティング担当の伊藤彰宏さんは、アバターに関わるプレーヤーには「作る人と見せる人、広める人、そして使う人がいる」と分析する。これまで、絵を描くように3Dアバターを制作できる「ブイロイド・スタジオ」、アバターを公開・共有できるショールーム「ブイロイド・ハブ」をリリースし、需要をつかんできた。

 アバターを「作品でなく、生き生きとさせるものが服」であると捉える。今年4月、アバターの服に「キャラクターのコスチューム」でなく「リアルクローズなファッション」としての価値を創出するため、クリエイターらと協業するプロジェクト「ブイロイド・ウェア」を始めた。第1弾はユニセックスブランド「クロマ」との協業。10月には第2弾で、おしゃれにこだわる芸人の小峠英二さんとテレビ朝日のVチューバーバラエティー番組「超人女子戦士ガリベンガーV」で協業した。

■写真映えは同じ

 購買をはじめ、生活の様々な行動に直結するSNS。そのコミュニケーションで写真映えが大事なのはアバターも同じだ。アバターを使う人々の間では、実写の背景で撮影しシェアしている。こうしたトレンドができるほど、アバターを被写体にした写真は広く楽しまれている。

協業プロジェクトの発表では約1500リツイートされた

 ブイロイドでは7月、手軽に3Dアバターの制作と着せ替え、写真撮影ができるスマートフォンアプリ「ブイロイド・モバイル」の配信を始めた。同時に、アニメ映画「サマーウォーズ」との協業で、作中のバーチャル空間をアプリ内に再現し、撮影イベントを実施した。これにより、多くの消費者にアバターを持ってもらい、着替えさせることにも成功した。

 同イベントでは、「エクストララージ」のリアルな商品と同じデザインのバーチャルなアバターウェアを無料配布した。リアルな商品は発売日にエクストララージの各店舗で完売が続出した。アバターのファッションは現実の購買にもつながる。出版で電子書籍と紙の書籍がパイを食い合う関係でないように、アバターによる所有や体験は現実の代替ではなく、現実と相互作用する同等のものだ。

 バーチャルに踏み込むことで、既存のファッションビジネスにもチャンスが開ける。ファッションとライフスタイルの際が薄まるなか、アバターも新たなライフスタイルとして注目するべき存在だろう。

(おわり/繊研新聞本紙19年10月28日付)



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