「バレンシアガ」 ADにピエール・パオロ・ピッチョーリ氏

2025/05/20 10:35 更新NEW!


ピエール・パオロ・ピッチョーリ氏© David Sims

 【パリ=松井孝予通信員】仏ケリングは5月19日、傘下「バレンシアガ」のアーティスティック・ディレクター(AD)にピエール・パオロ・ピッチョーリを任命した。就任は7月10日、初コレクションは26年春夏のパリ・ファッションウィークで披露される。仏紙ル・モンドによると、ピッチョーリは「フェンディ」の後任候補に挙がっていたが、合意には至らなかったという。今回の任命により、仏ラグジュアリーメゾンにおける一連のAD刷新の全体像がほぼ見えてきた。

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 「ヴァレンティノ」で約15年にわたりクリエイションを担ったピッチョーリは、オートクチュールに強みを持ち、詩的で、多様な価値観に応える美意識により幅広い支持を得てきた。バレンシアガのジャンフランコ・ジャナンジェリCEO(最高経営責任者)は、「彼のビジョンが、メゾンの大胆な創造性と共鳴する」と期待を寄せた。

 一方で、ピッチョーリには二重の課題がある。まず、約10年間にわたりバレンシアガに強い個性を与えたデムナのクリエイションを、いかに継承しつつ刷新するか。また、22年の広告問題によるブランドイメージの低下や、ラグジュアリー市場の不振を背景にした業績の立て直しという経営的課題にも直面している。より広範な顧客層への訴求と、クチュールによるラグジュアリー性の再強化が期待されている。

 ピッチョーリはインスタグラムに「私は歴史の中に自分を位置づけ、新たな章を加える機会を得た」と投稿し、前任者デムナへの敬意も表明した。バレンシアガという構築美と前衛性の系譜に対し、謙虚で柔軟な姿勢で、そのヘリテージを引き継ぐ構えを示している。

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