アウトドアメーカーが体験施設を次々と設けている。ブランドの個性を色濃く出しつつ、自然の素晴らしさを体感できる作りが多い。新施設は既存キャンパーのみならず、非キャンパーも呼び寄せる。コト提案を強め、モノだけでなく体験消費を促す。
「アルペン」水野敦之社長に聞く、新たな仕掛けの機会に新規客多く手応え
――改めて、アルペン・トーキョー開設の狙いを。
我々はこれまで、郊外を中心に店舗を出してきたため、都心部での出店が手薄だったが、かねてより人口が集中する都心部でのシェア拡大には取り組みたいと思っていた。ただ都心部だと既存店のような大型の売り場は作れないので、デジタルを活用しつつ、お客様のニーズを満たす売り場を作っていく。
――開業から3カ月が経ち、手応えは。
同店のオープンは多くのメディアで取り上げられ、宣伝効果は狙い通りの結果が出た。店舗数が少ないエリアだったので当然ではあるが、新規客の比率も非常に高い。また、既存店に比べて若いお客様が多く、新たな客層を獲得できた。有名人を招いたイベントの開催やメーカーとの協業の拡大など、今までできていなかった取り組みも進んでいる。
どうなる?これからのキャンプ
ソロキャンプ流行の立役者 芸人・ヒロシさん「キャンパーは洗練され、数ある道具は淘汰される」
今のこの盛り上がりは異常ですね。テレビ番組やCMなど何でもキャンプに絡める風潮があって、キャンプ場の混み具合もすごいことになってますね。
たき火会の島田君(ベアーズ島田キャンプ)らと撮影した動画を見た人から、「これを見て僕も初めてキャンプに行きました」「ジムニーを買っちゃいました」などと聞くと、人の心を動かせたことが初めは純粋にうれしかったですね。ところがブームによって色々な人が入り込んでくると、困ったことも増えるわけです。例えば、たき火の不始末やゴミの増加といった問題です。世間はその解決策を、僕に求めることがありまして…。別に僕らは啓蒙(けいもう)活動をしているわけではなく、ただキャンプが好きで、遊んでいるだけで。そこまでの役割を求められるようになったのは、正直、違うと思いますね。
なぜ人気?ソロキャンプ
有望市場として注目されているソロキャンプ。その成長可能性はどこにあるのか。また、キャンプをブームで終わらせないようにするには。ソロキャンプを題材にした人気漫画『ふたりソロキャンプ』の作者・出端祐大さんと、〝ソロキャンプを始めてみたい人〟におすすめのスタートキットを今年発売した「コールマン」で、マーケティング責任者を務める根本昌幸氏に、語り合ってもらった。
――なぜ「ソロキャンプ」をテーマに漫画を描こうと思ったのですか。
出端 キャンプが元々好きで、一人でよくやっていました。ラブコメディー物も描きたいと思っていたので、それらを掛け合わせたものを描いたら面白いと思い、今の形になったのです。ただ「キャンプ漫画」となると、単にそれが好きな人しか読まなくなる恐れがあります。そこでキャンプの玄人と素人のキャラクターを登場させ、初心者からの問いかけにベテランが答える形で、ドラマを展開していくようにしました。こうすれば、キャンプ未経験者でも興味を持ちやすくなり、読者がキャンプを始めるきっかけになるのでは、と期待したのです。
根本 私たちはキャンプ用品メーカーとして、日本でキャンプを広める活動しています。特にキャンプをしたことがない人に関心を持ってもらい、その楽しみ方を覚えてもらいたいと思っているのですが、実際はなかなか難しいと感じています。そうした中で、漫画という表現形態で分かりやすく、かつ面白く、その魅力を伝えてくださるのは、本当にありがたいことだと思っています。
キャンプのすそ野 広げるには?
キャンプ・アウトドア市場のすそ野を広げるにはどうすべきか。日本で初めてアウトドアに特化したオープンエア型のSCである「モリパークアウトドアヴィレッジ」(MOV)の開発に関わり、現在は同施設の管理運営責任者を務める高橋佐登志さんと、愛らしいブービーバード(カツオドリ)のキャラクターで知られる「チャムス」を日本に広めたランドウェル社長の土屋芳隆さんが語り合った。
――足元のキャンプ・アウトドア需要をどう見る。
高橋 用品需要は一巡したと言われていますが、依然、キャンプ人気は続いていると感じます。販売の伸びが鈍くなっているのは、海外生産におけるサプライチェーンの混乱が招いた品薄による販売機会ロスが主な原因です。少量でも製品が入荷すると、それをお買い求めるお客様の行列ができる店舗はありますので、まだまだ需要はあると見ています。
土屋 確かに人気のキャンプ場は、今なおどこもいっぱいですね。また、子供が自然に触れるとなると、登山などと比べてキャンプはハードルが低いアウトドアアクティビティーですので、キャンプの人気は続いていくと思います。
こうした業界にいると、多くの人がキャンプをしていると思いがちですが、やったことが無い人は実はまだたくさんいます。先日も、ある大学の3年生約15人と話す機会があったのですが、その中でキャンプ経験者は一人だけでした。このように、まだテントで寝たことが無い人は世の中にはいっぱいいると感じますね。だからこそ、マーケットはまだ広がる可能性はあると思います。
SENKEN CAMP BIZ 2022 CONTENTS
そのほかにも、和歌山にある有力アウトドア専門店「オレンジ」の池田道夫社長と馬杉雅喜監督による「おやじキャンプ飯」についての対談や、椎名誠さんらに「これからのキャンプ」を伺います。
機能面では「コーデュラ」を徹底研究、生産面では国内生産に注目し、「キャプテンスタッグ」の新工場を取材。
ファンクションジャンクションやムラコなどをはじめに、有力専門店やブランドの総まとめを掲載しています。
続きが気になる方は繊研新聞電子版をご覧ください。