欧州議会は9月9日、繊維製品の廃棄物回収・選別・リサイクル費用を、生産者(ブランドや小売りなど市場に製品を投入する事業者)に負担させる指令を最終採択した。ファストファッションの台頭で廃棄問題が深刻化するなか、循環型経済への移行を促す狙い。
(パリ=松井孝予通信員)
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欧州委員会によると、域内では年間1260万トンの繊維廃棄物が発生し、世界全体のリサイクル率は1%にとどまる。新指令では製品の回収・選別・リサイクル費用をメーカーや小売りが負担する「拡大生産者責任」(EPR)を導入。EU(欧州連合)域内外を問わず全ての販売者に適用される。官報掲載を経て来月発効する見通しで、加盟国は20カ月以内に国内法化し、30カ月以内(28年春)に制度を運用開始する。小規模企業には1年の猶予が与えられる。
EUでは25年から繊維の分別回収が義務化され、フランスやオランダはすでにEPRを導入している。フランスでは非営利団体のリファッションが制度を担うが、資金の偏在や輸出依存が問題化しており、EU全体でも同様の課題が浮上する可能性がある。
業界からは「循環型モデルへの転換を加速させる」と歓迎する声がある一方、「追加コストが競争力低下を招く」との懸念も強い。環境団体は「数値目標が弱められた」「アフリカなどへの中古衣料輸出を助長する恐れがある」と批判の声が上がっている。
指令は食品廃棄物の削減も柱とし、EU全体で年間6000万トンに上る食品ロス削減と併せ、持続可能な消費モデルの構築を目指す。