サステイナブル分野においてスタートアップが市場を広げている。環境配慮型の革新的な素材やデジタル技術開発で、新たな需要を掘り起こしている。社会貢献と経済合理性を追求しながら新しい市場領域を創出することで、繊維・ファッション業界を活性化している。
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「サステイナブルやSDGsの目標を負担なく達成しませんか」と業界に向けて提案しているのが、当社の子会社バイオテックワークスエイチツーの推進する、廃棄衣料品を水素化するプロジェクト「バイオテックワークスエイチツー」です。
捨てるは良しへ
世界の繊維産業の二酸化炭素(CO2)排出量は全産業のなかで、間もなく1位になると言われています。そのなかで、多くの企業はリサイクル原料を使用することで「環境に配慮している」とアピールしています。しかし、繊維産業のサプライチェーン全体のCO2排出量において、原料領域が占める割合は10%程度でしかないと考えています。
CO2排出を抑えるために、ブランドに高い付加価値を持つアウトドアメーカーなどは、消費者に販売した自社製品を買い取り、再度販売する取り組みを行っています。しかし、ボリュームゾーンブランドやファストファッションには、その手法は適用できません。
私たちが推進するバイオテックワークスエイチツーのプロジェクトは、「捨てることを良し」とする取り組みです。これは、廃棄アパレルの削減にとどまらず、全ての有機廃棄物を再生可能エネルギーへ変換させ、サステイナブルの先にあるリジェネレーション(再生)社会の構築を目指すものです。
プラントで発生した混合ガスは、水素とCO2に分けられ、水素は燃料電池や水素コージェネレーションで再生可能エネルギーとして発電することができます。
賛同は150社以上
現在、バイオテックワークスエイチツーはサポーター企業を募集しており、上場企業含めて150社以上の賛同を得ています。企業には、商品回収時のCO2削減量を商品販売前から可視化するサービスを提供していきます。25年からは水素生産量の可視化システムや、CO2削減量のエビデンス提供システムなどのサービス開始を予定しています。
24年にはCO2削減量のリアルタイミングモニタリングや、水素の利用先までのトレースを可能にするサービスを年間契約で開始する計画です。
これらカーボンニュートラルに向けた定量的なデータの提供は、サステイナブルを目指す企業にとって大きなメリットがあります。このメリットは海外を含む縫製工場などでも生かすことができます。工場では約5~7%の裁断くずやB反、C反が排出されていますが、これを当社に提供することでカーボンニュートラル化が可能になります。
25年には日本とマレーシアでプラント建設を目指します。そして、日本では全てゴミが資源になり、廃棄物がゼロになる時代を構築したいと考えています。それに向け、大手量販店チェーンや各自治体との取り組みを通じ、全国47都道府県にプラントを建設したいと考えています。
このプロジェクトに対して、欧米に主な市場を持つ東南アジアなど海外の生地工場や縫製工場からも問い合わせが増えています。繊維業界を改革していこうとする動きが活発化していることを感じています。
(繊研新聞本紙23年11月27日付)