繊維・ファッションビジネス業界の一員となられた皆さん、おめでとうございます。多くの選択肢があるなか、この業界に進まれたことをうれしく思い、心から歓迎の言葉を贈ります。
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さて、ファッションビジネスとは何でしょう? 生成AI(人工知能)によると、「消費者(あなたや私)のファッションに関するニーズや好みを捉え、それを満たす商品やサービスを提供するビジネスのこと」。確かに、その通りです。さらに「人々の生活を豊かにするだけでなく、社会全体の課題解決にも貢献できる可能性を秘めています」と答えてくれました。なんと、うれしい分析ではありませんか。
あなたや私に、一人として同じ人間はいませんから、全ての人々の好みを完璧に満たすことは、ほぼ無理と言えるでしょう。けれども、その制約の中で、どれだけ多くの人々を満たせるのか、あるいは、特定の人々に深く愛されるのか…といったことに挑戦し、対価を得るのがファッションビジネスです。もちろん、大きな収益につながらないこともありますが、個々のアイデアや磨いた技術、豊かなネットワークしだいでチャンスが広がる世界でもあります。
社会課題の解決に貢献できる可能性をAIが指摘した背景には、主に2点があると想像します。一つは「多様性」と切っても切れない特徴です。人々の心の動きを捉えるところから始まるビジネスは、個性と自由を尊重しながら発展してきました。今のように、多様性が重要と言われるずっと前から、美しさや面白さを競い、心地良さを楽しむ人々の仕事の連鎖で成り立ってきたのです。
もう一つは、サステイナビリティーに対する期待でしょう。世界2位の汚染産業とやり玉にも挙げられましたが、言い訳することなく、環境負荷の低減に努めてきました。特に日本は、繊維を循環させたり、温室効果ガスの排出量を減らしたりする技術に優れた蓄積がありますが、さらに研究や連携が進んで、新たな成果が生まれつつあります。
こうした動きに着目し、繊研新聞では昨年12月から「サステイナビリティーのその先へ」という読み物を増やしてきました。持続可能な事業の考え方を一歩進めようと奮闘する人々を追っています。キーワードは、再生を意味する「リジェネレーション」(Regeneration)。地球環境や社会の維持のために「マイナスのものをゼロにする」ことにとどまるのでなく、「少しでもプラスに持っていく」発想です。
多様性を前提に、人々の生活を豊かにしてきたファッションビジネスは今、人々や産業をもっと元気に、さらに幸せにしようと動き始めています。この新しい未来の歴史作りに参加する皆さん、繊研新聞は応援していきますので、思う存分力を発揮してください。どうぞよろしくお願いいたします。
(編集局長・若狭純子)