各社の取り組みが「ガラス張り」

2016/04/29 06:40 更新


《話題を追って》4月1日施行の女性活用推進法

 具体的活用策の策定・公表を義務化

 勤続年数や管理職比率などの数値も

認定マークの「えるぼし」は評価段階に応じて3種類ある
認定マークの「えるぼし」は評価段階に応じて3種類ある

 

  企業に女性活躍を促す法律「女性活躍推進法」が4月1日、施行された。10年間の時限立法だが、この法律により企業は女性活用に向けた具体的施策を策定し、公表することが求められることになった。

 

 同法は、従業員301人以上の大企業に、女性登用について数値目標を含む行動計画の策定と公表を義務付けた。罰則規定はないものの、企業にとっては大きなプレッシャーになることは間違いない。一方、従業員が300人以下の中小企業は努力義務とされた。

話題を追って1 

 

 大企業の場合、計画策定だけでなく女性活躍に関する現在の数値の公表も義務付けられた。各種ある数値のうち、①採用者に占める女性比率②勤続年数の男女差③労働時間の状況④管理職に占める女性比率──の4項目は基礎項目として必ず把握し、課題を分析して公表しなければならない。その他の項目についても厚生労働省は、どこまで公表するかで女性活躍推進に対する企業の姿勢を示すことになるとして、積極的な開示を呼び掛けている。

 

 企業の女性活用情報の外部への公開のために、厚労省は、「女性の活躍推進企業データベース」を構築した。業種別、都道府県別、企業規模別に、企業の現状や取り組みを比較できる仕組みを整えた。

 

 また、女性活躍の認定制度も始まった。取り組み状況が優良な会社が、都道府県労働局に申請すると、厚生労働大臣から認定を受けられる。認定を受けた会社は、認定マーク「えるぼし」を自社の商品や広告、名刺、求人票などに付けることができ、女性の活用に積極的な企業であることをアピールできる。

 

 各社の取り組みが「ガラス張り」になるだけに、この法律をどう活用するかで、企業のイメージや姿勢が問われることになる。 

 厚労省が、この分野のリーディングカンパニーとして取り上げている企業のうちのファッションビジネス関連企業の動向を見てみた。

 

事例

 西友は、米ウォルマートとの02年業務提携、08年完全子会社化以降、取り組みを加速。ダイバーシティーの推進が多様な顧客ニーズへの対応につながり、企業の成長につながるとする。特に店舗での女性の活躍推進は重要なミッションと位置付ける。

 

 豊田通商も14年に「Diversity(多様性)&Inclusion(受容)宣言」を発表。多様性を受け入れ、積極的に生かすことでグループの優位性を作り上げることを経営戦略と位置付ける。

 

 三越伊勢丹ホールディングスも、顧客の大半が女性であること、従業員の約70%が女性であることから、従来から性別役割分担の意識は少なく、育児休業や育児時間などの時短勤務にも理解があるという。

 

 帝人グループは「女性が幹部になれるのか?」というジェンダーバイアス(社会的・文化的性差別あるいは性的偏見)は「自然消滅」せず、意識的に払拭する必要があるとして02年に「女性管理職3倍増計画」(05年までの間に女性管理職を3倍に)を策定するなどして取り組みを本格化させている。

 (高沢徹)

(繊研新聞 2016/04/18 日付 19455 号 3 面)



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