繊研新聞社とJSTOの共催で行われたインバウンドのビジネスセミナー。その内容の一部を掲載します(情報の一部は開催時から更新しています)。
【話し手】 ジャパンショッピングツーリズム協会専務理事(USPジャパン代表取締役)新津研一さん ※新津さんのレポート+はこちら
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こんにちは。JSTO (ジャパンショッピングツーリズム協会)の新津といいます。1時間ほど、お話をさせていただきます。
最初にお伺いしたいのですが、仕事で上司から「インバウンドをやれ」と言われている方はどれくらいいらっしゃいますか。はい。なるほど。それ以外の方は、興味があってということですね。
では、「インバウンドをやれ」と言われた中で、1年以上前からやれと言われた方はどれくらいいらっしゃいます? 5人くらいですかね。今日は70人いらっしゃるので、1年前からインバウンドをやっている方は1割にも満たない。
今、日本に免税店は1万8000店あるのですが、そのうちの1万店がここ1年以内に参入されたところです。新聞やテレビで毎日、「訪日外国人の勢いは凄い」という記事が出て焦るかもしれませんし、インバウンドってどうすればいいのと疑問を持って本日お越し頂いたかもしれません。
が、トップランナーとて、すごい先にいるわけでなく、その辺の人達も半年くらい先にしかいませんので、今日のセミナーで知識を入れてもらえれば、皆さんも何とか第一集団の最後のほうには追いつけると思います。今日はインバウンド市場の基礎から最新のネタまでお話をさせて頂きます。
簡単に自己紹介をさせていただきます。私は19年間、三越伊勢丹におりまして、百貨店の現場で営業の企画をやっておりました。ほとんど皆さんと同じ立場で商売をやってきました。観光のプロでも学者でもありませんので、商売人として話をさせていただこうと思います。
"日本人が2分に1人減っている時、アジアでは1秒に2人が増えている。しかも、もっと買い物をしたいと言っている”
まず最初に、「インバウンドってそんなに大事なの?」という問いをさせていただこうと思います。
みなさん、こんな感じを持っていませんか? インバウンド関連の売り上げって、行っても2~3%、よくて10%、凄く頑張って30~40%なわけですよ。「ほとんどのお客は日本人なのに、なぜみんな騒ぐのですか?」って思いませんか。
私の答えはと言えば…「あなた次第です」。いつもこう言うんです。「大事か大事でないか」は各社さんの戦略次第です、と。
どういうことかと説明します。皆様のターゲットはどういう方でしょう。「20代から30代の女性」とか、あるいは「40代男性」とか、いろいろターゲットを決めていらっしゃると思いますけれど、ほとんどの日本のファッションビジネスの方のターゲットは、「日本人のうちで」という枕詞が隠れていると思います。
しかし残念ながら、日本人は2分に1人ずつ減っていっているんですよね。買い物も別にしたくない人達がどんどん増え、しかも2分に1人減っていっている。
今こうやって話始めてからもう8人くらい減っているわけですよ(笑)。一方で近隣には40億人ものアジアの人達がいる。その人たちは、「もっと豊かになりたい」「もっと物が欲しい」と言っている。超買い物好きです。
その人たちは、1秒間に2人増えています。凄くないですか?1秒に2人ですよ。いま話し始めて4分ちょっとですから、もう500人は増えている。日本人は2分に1人減って、アジアの人は1秒に2人増えている。
皆さんがインバウンドをやろうがやるまいが(対象とする)お客さんは変わります。絶対に変わる。止められません。日本人は減ります。買い物もどんどんしなくなります。アジアの人は増えます。買い物をしたくなります。という風に、お客が変わるというのがまず1つのポイントです。
もう1つは、皆さんがやってもやらなくても、競合相手はやります。マーケットが増えるわけですから、そこに参入してくる人は増えるということは間違いない。
お客さんも競合相手も皆さん自身が止めることはできない。その中で「皆さんどうされますか?」というような問いなんです。「要するにインバウンドをやれと言っているんでしょ?」と言われますが、それはそうなんですけど、話は単純ではありません。
実際、インバウンド対応って結構しんどいんですよ。相手が外国人なので、例えば、中国語を話さないといけない。結構しんどいです。でも、その壁を乗り越えてもターゲットを変えるのか変えないのかというのがインバウンド対応の本質だと思うんです。
「ターゲットを変える」ということがどういうことかと言えば、1番質問されるのが、「中国人が一番読んでいるファッション雑誌は何ですか?そこに広告を出したいんですけど」という販促の話と、「店頭POPどうすればいいんですか?」という販売の話だけを聞かれることが多いんですが、そうじゃないんです。
まぁ、広告を出せば、中国市場は伸びているので、売り上げが10%くらいは伸びるかもしれないんですよ。伸びるんですけど、「ターゲットを変える」というのはもっと大きな話で、こういう風にイメージしていただけたらいいと思います。
婦人服の専門店をされている方は、ターゲットを変えて紳士服の専門店になるくらいターゲットを変えるということです。品揃えも変えなくてはいけないし、販売員も変わるでしょう。店の内装も変えないといけないし、広告出稿する雑誌も変わる。
とは言え、「そっくり全部変えたほうがいいですよ」というわけではなくて、自分のお店の品揃え・販売・販促で変えたほうがいいのかどうなのかを全部自分たちで考える、というのが大事なポイントです。
「ターゲットが変わる」あるいは「新しいターゲットを狙う」というのはそういう話です。先ほどお話したように、どこか一つの施策だけ行っても売り上げは10%、20%は上がります。ただ、商品も販売も販促も戦略的に取り組むと、ものすごくあがります。
今、インバウンドで1番元気がいいのは百貨店さんです。百貨店さんの外国人売り上げは、いま前年比どれくらいかご存知ですか?平均で300%伸びています。30%じゃなくて、300%ですからね。
ちょっと片手間で売り上げをもらおうかという話ではなくて、どこまで戦略的にやりますかというのが、訪日外国人対応です。
インバウンド市場の基礎ということで、今回はポイントだけお話します。よくインバウンドという言葉を聞きますが、これは観光業界の言葉でして、海外旅行を指してアウトバウンドとインバウンドがあるんです。
日本人が海外に行くのがアウトバウンド旅行、海外から日本にくるのがインバウンド旅行です。そこから、「インバウンド客」とか「インバウンド市場」とか「インバウンド○○」とかという風に使うようになったんですね。
今日、お話するのはほとんど観光客の話ですが、それ以外にも仕事で来る人、友達や子供を訪ねてくる人が全体の2割ぐらいいます。なので、年間の訪日外国人1300万人(※2015年は2000万人前後)のうち、260万人くらいは商用、あるいは日本に住む友達や子供を訪ねてきているのです。
後者の人は、例えば、自分の娘が通う大学がある八王子とかの娘の部屋とかに泊まっているわけですね。そういう人達は買い物の仕方も違っています。結構いいパイになってきていますので、ニッチにいくなら、敢えてそういう人を狙うという戦術もあります。
ちなみに、インバウンドの情報を常に知りたいのであれば、「トラベルジャーナル」「トラベルヴィジョン」「やまとごころ」「JSTO」などの無料のメルマガが役に立つと思います。
訪日ゲストの旅行消費は、2012年から1兆円も増えました(下表参照)。倍増です。ショッピングだけ見ても、毎年2000億円から2500億円売り上げが増えてきています(※2015年度は8000億円増加し1兆5000億円に達すると予測)。
昔は、宿泊とか交通とか、いわゆる観光業の人たちがメーンだったのですが、今は観光がメーンではなく、日本食を食べたりショッピングをしたり、町歩きをする目的のために来ているわけです。観光のために来ている人はあまり多くない。
名所旧跡に行くみたいな日本人ぽい観光よりも、街を歩くとか、ご飯を食べるというのをすごく楽しみにしてきてくれている。
"「東京ですごく売れている、北海道も凄い」とか騒いでいる日本は、韓国の半分しかない。それが現実です"
で、そうなんですけれども、実は、「日本のショッピングって最高!」と思っているのはほとんど日本人だけです。海外ではあまり知られていない。
シンガポールにはオーチャード通りというのがあって、ショッピングの名所になっています。そこはシンガポール政府は22年前から毎年数億円かけて、「シンガポールのショッピングは最高!」とずっと言ってきたんです。
世界一のショッピング大国は今はドバイです。ドバイもシンガポールを見習って、今年まで19年間、「ドバイで買い物しましょう」と言っています。
アジアではシンガポール以外でも、タイでもマレーシアでもインドネシアでも香港でもファッションフェスティバルというのをずっとやっています。韓国はファッションフェスティバルをやっていなかったのですが、5年前に開始してアピールをした結果、海外から眼鏡やコスメを買いに行くようになった。
5年前まで、日本と韓国は観光客数も売り上げもほぼ一緒でした。
去年、韓国は日本より300万人も多い観光客を招き入れて、ショッピングの売り上げは日本の倍です。倍ですよ。韓国といっても、ソウルとプサンとチェジュ島くらいしかショッピングエリアがないにもかかわらずです。「東京ですごく売れている、北海道も凄い」とか騒いでいる日本は、実は韓国の半分しかない。それが現実です。
というのも日本は、今まで「日本のショッピングっていいですよ!」と海外にPRしたことがなかったんです。それでようやく、1年半くらい前に、ジャパンファッションフェスティバルというのを民間で立ち上げて、プロモーションを始めたというのが実態です。
私たちの団体がやらせてもらっているのですが、ようやくちょっとずつ盛り上がりはじめました。2014年の訪日ゲストによるショッピング売上高は、7000億円を超えました。前年比154%です。前年に比べて2500億円新しい売り上げが外から降ってきた。
これまでは、ECとリアル、百貨店と専門店みたいにチャンネル間でパイを奪い合っていましたから、総パイは変わりませんでしたけれども、インバウンドに関しては、全く新しい売り上げ。市場を奪い合うゼロサムではなく、新しく加わるアドオンの市場なんです。
今、日本に来る外国人の2人に1人が、ドンキ・ホーテさんに行っていると言われています。ドンキは2500億円のうち、いくらを持ってってるんでしょうね。客数は29%増。客単価は18%増と両方とも上がっています。
報道を含め、昨今の様子を見ていると、「日本に殺到」というふうに見えるかもしれませんが、実はそうではありません。韓国や香港も同じくらい伸びている。なので、訪日ブームなど来ていないんです。東アジア、東南アジアへの旅行ブームに乗っかって、日本にも来ている人がいますという程度なんです。
客単価を見ると、いっぱい買ってくれているように見えますが、2013年を100とすれば、円安効果がありましたので、その効果が118%のうち117%くらいあります。ほとんどが為替の影響です。今まで通りお小遣いを持ってきたら、いっぱい買えましたというのが、この数字の解説です。
もちろん、2500億円増えました、54%伸びましたという事実は変わらないです。日本のファッションアパレルについては大変な数字ですけれども、「世界中が日本に夢中、殺到、僕らの商品、評価されている」と思うのは大きな間違いだということです。
”台湾、韓国、中国、香港、アメリカ、タイの上位6カ国でインバウンドの売り上げの8割を占めます”
じゃあ、どうしたらいいのかというと、来ていただいたお客様に満足して帰ってもらって、また来てもらう。これに尽きます。日本に来て良かったと思ってもらわないと二の矢を継げません。ここから頑張ってやらなくてはいけない。
具体的に話します。まずは、当たり前のことですが、お客様のことを知る。
外国人観光客をグラフにしてみました(2014年度)。縦軸が客数です。横軸が客単価です。圧倒的に中国の人の勢いがわかりますね。
今年さらに、中国のお客様は前年比200%で客数が増えています。あっという間に、客数でも日本に一番来ている国と言う風になります。ですので、中国のお客様を無視できないというふうにファッション業界も考えざるをえない。というのがこの表ですね。
「韓国は単価が低いな、台湾はそんなでもないなぁ」と見えるかもしれませんが、韓国の人は日本に年間に10回以上も来ている人がいる。1万9000円毎回使う人が何回も来ているということです。そうすると単純に1万9000円だから無視するということは無いんじゃないかと思います。
白抜きの数字は、単純にその国の訪日客数を国の人口で割ったものです。台湾の人は、毎年12.2%が日本に来ています。すごいですよね、8人に1人が毎年日本に来ているんですよ。香港の人もそうですよね。
それに比べて中国の人はわずか0.2%に過ぎない。99.8%の人がまだ日本に来たことが無いということなんです。今は倍に増えましたが、それでも99.6%は来たことがない。改めて数字で見ると、中国のポテンシャルの大きさも見えてくるんじゃないかと思います。
この台湾、韓国、中国、香港、アメリカ、タイの上位6カ国でインバウンドの売り上げの8割を占めます。
ターゲットの横顔が分かり、マーケティングをするということですので、あとは皆さんがいつもやっていることです。どういう人かを知って、何が好きかを想像して、それにふさわしい品揃えをするという普通のマーケティングをしていただければいいと思うんです。
外国人の観光客ということと、、ツーリストだという2つのことだけは、いつもの日本人とはちょっと違うんですね。
外国の人ですので、気候とか宗教とか経済とか、こういうことをちょっと頭に置くと、より喜んでもらえるでしょう。想定される訪日ゲストが、グループ旅行なのか個人旅行なのか、あるいは友達と来ているのか家族旅行なのか、何日くらいの日程で来ているのか、などを気にすると売り上げにつなげやすいのかなぁと思います。
この辺は、詳しく知りたいようでしたら、日本政府観光局のHPがあり、そこに国別の資料室というのがあって、データが随時更新されています。
具体的な施策として「何をしましょう」というのを商品、販売、販促に分けて話したいと思います。「何が売れますか?」という質問を受けることが多いのですが、"日本"というのは売れます。
ただ、「メード・イン・ジャパン」だけが売れるかと言えばそうでもないんですよね。「エルメス」、すごい売れていますが、あれは別に「メード・イン・ジャパン」ではありません。
このペーパーの上半分は、観光庁が発行しているプロモーション方針です。
日本が海外でPRするときは、かならずこの要素を入れなさいということになっています。観光庁が発足以来、多くの外国人観光客にインタビューして、「なぜ日本に来るんですか?」というのを調査した結果だそうです。
外国人観光客が日本に魅力を持つ最大の理由は、「日本人と会いたい」。今ここにいらっしゃる皆さんとコミュニケーションをしたい、皆さんと会いたい、喋りたい、飲みたいというが外国人観光客が日本に来る理由なんですね。
日本を旅行することでしか得られない3つの価値。日本人と会うのは、日本を旅行するのが一番いいというわけです。
"買い物体験そのものが観光。「日本」が商品になる"
なぜでしょうか。
1つ目は、日本人の神秘的で不思議な気質に触れることができるという点。
「おもてなし」もそうでしょうし、震災のような有事でも秩序正しく誠実に行動する。ご飯を食べる前に「いただきます」と言うとか、挨拶をするとか、シャイなのに妙に馴れ馴れしいとか、日本人の気質が面白いと外人が言っている。
2つ目は、日本人が細部にまでこだわりぬいた作品、商品に出会えること。
伝統工芸品だけでなく、アイホーンのつるつるなのは日本人のおかげだよね、とか、あるいは、高校生がシャープペンシルを買いたいと大きな文房具店に行ったら、100種類も200種類ある国。そんなに要るのかと思いますが、外国人の方はびっくりするんですね。100円ショップのバラエティ感もそうですね。
伝統芸能だけでなく、日用品でも、素材とか品質とかデザインとか価格とかにすごくこだわりますよね。皆さんも苦労されていると思いますが、世界一厳しい消費者がいけないんです(笑)。世界一厳しい消費者が鍛えた日本の作品が彼らにとっては面白い。
3つ目は日本人の普段の生活の中にあるちょっとしたことが面白いようです。畳の部屋に布団を敷いて、障子を閉めて寝たいといった生活習慣とか、あと、渋谷の交差点も人気ありますよね。
我々にとっては日常の一部に過ぎませんが、満員電車に乗るツアーというのもあるそうです(笑)。
池袋から乗るそうなんですけれども、「8時32分着」であれば、32分ぴったりに着く。着いた瞬間にみんなが拍手する。位置ぴったりに停まりますし、行き過ぎたら戻りますから。さらに、みんな律儀に降りる人を待っていて、降りた瞬間にみんな乗る。そんなツアーがあるくらい日本人の生活はユニークなわけですよ。
この3つの日本の魅力、商売をしている私たちの立場からすると、ショッピングはまさに日本人に触れる最適な体験だと思うんです。接客販売をしてもらえれば、日本人の気質がわかりますし、商品を手に取ってもらえれば、作り手の思いや物が作られた産地の伝統文化とか気候とか風土とか色々なことが分かりますから。
ルミネさんとか伊勢丹さんの店内を歩けば、日本人がどういうところで食べて飲んでというのがわかっちゃうわけです。富士山を1時間眺めていても日本人の事ぜんぜん分かんないわけですけれど、1時間ショッピングをしてもらえれば、日本人の事全部分かっちゃう。
という風に考えると、ショッピングが物欲を満たすとか経済効果があるみたいな即物的な面が報道で強調されがちですけれども、そうではなくて、ショッピングを通じて日本人の魅力とか日本の魅力を体験するというのが日本のショッピングの大きな魅力の1つなんだろうと考えます。
僕らは「ショッピング・エクスペリエンス」(買い物体験)と呼んでいるのですが、買い物は消費行動だけじゃなくて、体験するということが非常に大きな観光そのものなんですよ、というのが日本という「商品」の大きな要素なんだろうなと思っています。
とはいえ、皆様は自分達のお店に来て欲しいし、自分達の商品を買って欲しいと思う。当然ですよね。そう考えた時に、まず何をしなくてはいけないかといえば、自己紹介をしなくてはいけない。自己紹介が結構大変なんですよ。
自社商品の紹介は、「外国人目線でわかりやすく紹介」っていうことをしなくてはいけない。外国人に「当たり前でしょう」は通用しません。
少し前に、ビームスさんやユナイテッドアローズさんらとタイアップをしてファミリーセールに外国人を呼びました。
その準備として、在日10年のアメリカ人にPRのプレスリリースを書いてとお願いしました。すると、1時間後に彼が来て、「新津さん、僕には出来ない」と半分怒りながら言うんです。「こんなのは僕はやりたくない。絶対外人も来ない。無理だ」と。
何を怒っているのかと聞くと、日本人が武器の見本市をやるなんて僕は知らなかった。ビームスさんは、ビーム(BEAM、光線)を売っていて、アローズさんはアロー(ARROW、弓矢)を売っていると思ったんですね、彼は。
彼からすると、「武器のショップが家族向けにバーゲンを行い、外国人を招待したい」という話になるわけです。知らない外国人にとってみれば、ビームスはビームを売っている店というのが自然ですよね。アローズは弓矢を売る店に見えてしまう。
○○庵がそば屋だということは日本人しか知らない。ことほど左様に僕らが考える常識って、改めて考えると凄く難しく、どこまで戻って説明するかを考えないと、自分達の魅力を伝えるどころか、自分達が何を扱っているかすら伝わらない。
大阪に難波ウォークという地下街がありますよね。「インバウンドであまり売れないんです」という話を聞きました。施設名が、「難波」「歩く」ですよ。やはり、意味がわからないじゃないですか。
ショッピングということすら伝わらない。こういうところに気づかないと、地下道の入り口にサインがあっても、そこがショッピングセンターだとわからない。
"自分達が普通の商品しかないんでと思っていても、外国の人にとってみたら「すごいね、何なのこのお店!」と思うところがいっぱいあるんです"
上手くやっているのはローソンさんです。自分達のことを「24時間365日開いていて、全国1万1000店舗で営業している青い看板のお店です」と自己紹介しています。
あるいは、栃木県にある鬼怒川グランドホテル。女将さんは、色々な外国人に自分のホテルをPRして大成功させています。
彼女は海外の旅行社に対しては、「東京の鬼怒川から来ました」と言うんです。東京の鬼怒川ですよ(笑)。一回来てもらえればいいんですよ。それが「栃木県から、栃木というのは・・・」と言った瞬間に誰も聞いてくれなくなります。
自分達をどれくらい分かりやすくー分かりやすくというのは海外の人から見て分かりやすくー自分達の魅力も含めて言えるか。「東京の鬼怒川」と言えば、東京から近いんだなと思うんですね。「栃木県なんですけど、東京からわりと近いんで来てもらっても大丈夫です」というと遠く感じる。
外国人目線で言えば、こんな話もあります。
タイ人のなかには、「日本に来たらロングブーツを履くのが夢でした」という若い子が結構いるんですね。(自国では)暑いですから絶対履けないわけです。重ね着もそうですね。だから日本に来て、「シャツ着てコート着て、ロングブーツ履いて、写メ撮ったら、キャーカワイイ」みたいな状態になるんです。
ロングブーツだって、コートだって、皆さんのお店にありますよね。そんなの当たり前でPRなんて敢えてはしない。だけど、タイ人の女の子にとってみれば、超キラーコンテンツです。
「かわいいですよ、写メ撮ってあげますよ」と言えるか、言えないか。その子がタイ人だから、これ喜ぶねと知っているか、知らないかで勝負が分かれちゃうんですね。
自分達が魅力的だと思っている商品が外国人から見たら魅力的じゃない、自分達がPRになっているなと思う文章がPRになっていない。
あるいは、自分達が普通の商品しかないんでと思っていても、外国の人にとってみたら「すごいね、何なのこのお店!」と思うところがいっぱいあるんです。
続いて販売施策です。販売施策として、まず受け入れ環境の整備をしなくちゃいけないということなんですが、一番不満が多いのは言葉の問題です。
"言語対応と言っても、基本は笑顔と日本語。後ずさりせず、1歩前に出る"
皆さんもそうですよね、外国人が来たら本当に困るし、スタッフも嫌がる。でも、言語対応と言いますが、基本は笑顔と日本語です。日本語でいいからとにかく笑顔で一歩前に出る、それが一番大事ですね。
「日本人は外人が嫌い、私達を見ると逃げる」。特に中国、韓国の人はすごく不満を持っています。けど、スタッフも、別に逃げているわけじゃなく、うまく対応できるか不安なだけなんです。中国語や韓国語で話しかけられると、「店長、お願いします」となってしまう。逃げているわけではないですが、そうやってちょっと後ずさりするのが逃げているように見える。
彼らツーリストも「私達にいい感情をもってないんじゃないか」とビクビクしながら来ている面もあるんです。だから、笑顔で前に出てあげればいいんですけど、そのためには事前準備をしないといけません。でないと、販売員さんが安心できない。価格表とか商品説明とか、基本情報とポイントの説明とかを多言語化するといいでしょう。
大体PR文みたいなのは外国語も読まないですから。必要な情報は読んでくれますけど、セールスポイントとか書いても全然読んでくれない。商品と値段と注意書きみたいなのをきちんと、あるいはインパクトのあるコピーみたいなのを付ければ最初の段階は十分だろうなと思います。
それ以外ではWi-Fiや決済、免税対応、このあたりが最初にやりたいところです。Wi-Fiは最近優先順位が下がってきました。Wi-Fiルーターを持ってきてくれる人もいますし、SIMカードも売れるようになってきましたので。
(上のシートに書いてある通り)受け入れ環境の整備は販促と表裏一体です。お客さんがいい思いをするとSNSでシェアしてくれたりとか、いいことにつながります。なので、コストが掛かるということでネガティブにならずに積極的にやると、販促にもつながると考えるといいでしょう。
言語対応は、まず外国の人が来るから何とかしなきゃという受け入れのレベルでは、フロアガイドやプライスカード、店内サインなどを用意します。このあたりはみなさんやるところです。
で、会話が始まっちゃうと大変ですね。「この色あるの?、サイズあるの?、新しいのを出してくれ、値引きは出来るのか?、免税は?」。聞かれ始めるとキリがないので、指差し会話集とかタブレット端末を用意するといいですね。
■関連図書 超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック
私は無料のグーグル翻訳をいつも使っているんですけど、ちゃんと使えます。しかも、無料です。タブレット端末を使えば画面に通訳さんが出てきてくれて3人で喋れるというサービスが月額3万円で使い放題というのもあります。
最後のおもてなしのレベルになると、ネイティブスタッフを雇うとか言語の勉強をするとかですが、これはなかなか踏み出しにくい。ですけど、ネイティブスタッフは最低でも日本人スタッフの3倍は売ります。凄いスタッフになると10倍は売ります。
ただ、中国人のスタッフを2人以上雇うと、いさかいが起きるという悩ましいこともあります。あるんですけど、いろんな国のスタッフを使うという時代は必ず来るでしょうから、早めにトレーニングをするのもいいでしょう。お金はかかりますが、効果はありますから。
"自分のお店のことだけではなく、その街の魅力も伝えてあげるのが長期的にはプラスになる"
言語対応で面白い話があります。ツーリストの方の質問って、半分は皆さんのお店のことじゃないんですよ。
買い物が終わった後に、「この辺でおすすめのラーメン屋ってありますか」とか「花園神社へはどう行けばいいですか」「浅草へはどう行けばいい?」「ホテルに帰りたいんですが駅はどこですか?」「トイレはどこですか?」というようなことを聞くわけです。
そうすると、いままで販売員さんはポケットに館のフロアマップを入れていればよかったんですけど、そうじゃなくてポケットに街の地図を入れるというのが、観光客をゲストと考えるとどうしても必要になります。
我々日本人が旅行に行く時もそうだと思いますが、トイレに関してはみなさん、すごく困っています。特にタイの方々は、自分の国にいるのと同じペースで水を飲みます。タイにいる時はずっと汗をかいていたのに、かかなくなるのでトイレが近くなる。
高速道路のサービスエリアでアンケートをとると、一番の不満が「トイレがどこにあるかわからなかった」という答えだそうです。
トイレぐらい、わかりそうなもんですよね、サインも出ていますし。でも、そうではないようです。あるショッピングセンターでも、トイレが分からないと言う声を良く聞くそうです。こういう情報は指指し会話のひとつに入れておくといいですね。地図にもマークしておくといいでしょう。
こういうちょっとした気の利いたことができると親切なお店だね、となり、あとで商売につながるかもしれない。
例えば、新宿などのエリアでプロモーションをする時に、「こっちのお店があっちのお店を紹介してくれる、あっちのお店がラーメン屋を紹介してくれる」となると、その街のいい評判を広めてくれるし、次来た時もその街に行きたくなるわけです。
最後に販売促進策です。プロモーションは4象限で分けて考えることをお勧めします。
縦軸が海外でPRするのか国内でPRするか、横軸がBtoBでやるのかBtoCでやるのかという4象限です。海外でやるのか国内でやるのかというのはわかりやすいですけれども、BtoB、BtoCがちょっとわからないですね。
皆さんから一番聞かれるのは、海外のBtoCです。「中国のどの雑誌に広告を出したらいいですか、一番読んでいるガイドブックはどれですか」というものです。予算が1億円以上あったら、どうぞやってくださいと言いますが、でも、砂漠に水を一滴落とすようで効果も見えませんよ、とお伝えます。
一番とっつきやすいのがBtoBです。どういうことかというと、ツーリストはほとんどの人がインターネットか旅行代理店で予約して、家からバスか電車で空港に行って、空港から飛行機で目的地の空港に着いて、そこから電車かバスでホテルに辿り着きます。
ホテルに泊まり、次の日に観光案内所などに寄って、みなさんのお店に来る。ものすごく狭い(細い)ルートを通ってやってくるんですね。ほとんどその道を外れない。飛行機からちょっと寄り道する人はいないですから(笑)。
なので、旅行代理店とかホテルとか観光案内所とか、細い道の上にいる人(会社)と上手くタイアップする、広告を打つのが近道です。
"1番のメディアは目の前にいる外国人のお客さん。気持ちよくなってもらって口込んでもらう"
今日からでもできる販売促進策は、BtoCの国内、自社の店舗の店頭です。
ツーリストの方の情報収集の圧倒的1位はインターネット。しかも口コミ、友達からのお勧めの影響は大きいです。そこで「どうやって広告を打ったらいいんですか?」と聞かれるんですが、一言で言えば、打てないんですよ。そんなところに広告なんてないですから、が答えです。
とすると何が媒体なのかと言えば、今、目の前に来ている外国人のお客様が一番の媒体なんです。この人がクチこんでくれるかどうかが勝負。この人が最初の1人と考えるんです。
皆様の店頭には必ず外国人のお客さまが来てると思うんですね。インバウンドの予算がもし100万円あったら、半分くらいそこに投入する価値があります。
ただ、なかなか店頭販促に多額のお金をかけられる店は無いと思いますので、目の前にいらっしゃったお客様をどれだけ喜ばせて、SNSなどでシェアしたくなるような仕掛けをするか、がポイントになります。
店内で写真を撮らせるのはもちろんのこと、その際にお店のロゴをいれてもらうか、ロゴ入りの何かを持ってもらうとか。写真を一緒に撮って“サイコー!”とか言ってもらう。そういう施策に突っ込めかというのが自社店舗での施策です。
最後に重要なのが、先ほどお話したようにオールジャパン、エリア単位での販促です。なぜなら、残念ながら、皆さんのお店や商品をダイレクトに検索して、そのためだけに日本に来てくれるツーリストはほとんどいないからです。いるとしたらよほどのマニアです。
マニアなんてそんなにいません。彼らは日本に来ることを決めて、銀座に来ることを決めて、ようやく皆さんのお店にやってくるんですね。あるいは、ある商業施設に来る事を決めて、皆さんの商品を買う。
まず日本に来てもらわないと勝負が始まらないんですよ。なので、オールジャパン、エリアでのイベントに参加するというのが非常に大事な動きになります。
これどういうことかというと、自分のお店に来て欲しいなら、自分のお店を宣伝するよりも自分の街を宣伝したほうが売り上げは増えるということです。このあたりが、インバウンドビジネスの非常に面白いところだと思います。
BtoBだと、今、色々な事業者さんが観光案内所をオープンさせています。
きゃりーぱみゅぱみゅさんの所属するアソビシステムさんが原宿に観光案内所を作りました。JTB、HISさんが心斎橋に、佐川急便さんは東京駅にそれぞれ設けています。
いろんな場所に色々な事業者様が作ってますが、さきほどお話した「細い道」の上に自分達が接点を作ってしまおうという戦略に出る人たちも出ているのです。
エリアイベントも各地で行われています。
表参道、原宿の「トウキョウグランドショッピング」、新宿の「新宿エクスプローラー」、渋谷は東急さん中心に「ビジット渋谷」の動きがありますし、関西でも福岡でもやっています。そして、私が主催しています「ジャパンショッピングフェスティバル」。これは先ほど来お話しているオールジャパンの取り組みです。どこの小売店でも参加が可能です。
ジャパンショッピングフェスティバルは何をやっているかというと、小売店さん、メーカーさんー我々は「おもてなし事業者」という言い方をさせていただいているんですけれどーおもてなし事業者さんが持っているお店の情報、商品の情報を私どもがお預かりをして、海外のゲストに英語や中国語に翻訳して伝えるという事業です。
取り組みは非常に簡単です、皆さんから日本語で情報をお預かりすれば、全て私達が4言語に翻訳して世界に発信をします。参加費は半年で2万円です。
なぜこんなことをやっているのか。観光に必要な情報はホテルも観光もグルメも全部リスト化されて多言語化されているんですが、日本のショッピングの情報はリスト化も多言語化もされていないからです。
そうするとどうなるか。スマホで「今日の帰りに3000円以内で居酒屋で飲んで帰りたい」と打てば、「ここ半径100メートル以内に50軒あります」とかリコメンドしてくれますよね。
一方、「帰りに5000円でバッグを買いたい」と思ってスマホで検索しても出ますか。情報がリスト化されていないから出ないんですよ、それどころかデパートが近くにあるかの検索もできない。
日本人でさえショッピングのコンテンツには今、ほとんどアプローチできないのが実情です。今、私達がやっているのは、「japanshopping.org」というのをポータルサイトにしていて-ショッピングの「ぐるナビ」みたいな感じですが-ここに載せた情報を、皆さんのHPに流しましょうというようなことをやっています。
"皆さん、毎日一生懸命商売していますから、何か特別なことをする必要はない。それをそのまま翻訳して海外に伝えるということが第一歩"
タウンページやイエローページを作っているようなものなので、是非、皆様ご参加下さい。更新できなくていいならわずか1万円です。一昨年から、このHPを通じて「ジャパンショッピングフェスティバルをやっているよ」というのを観光庁や東京観光財団などの行政と協力して、3億円かけて海外でPRをスタートしています。
なので、去年ぐらいからは海外の人も「日本でもショッピングフェスティバルをやっているのね」という風に知ってくれるようになってきています。僕らは皆さんのコンテンツを、言わば勝手にPRしている感じなんです。夏と冬はショッピングフェスティバルとバーゲンセールをやっていますよ、と。
今はブロガーさんや広告代理店さんにPRを先行してさせていただいています。このキャンペーンを見た海外からのゲストは、さっきお話したHPを見るんです。そうするとHPに載っているお店にばかり行っちゃうということになります(笑)。
例えば、左上は新宿のドンキホーテさんですが、こういう感じでロゴを出してもらったりですとか、右下は新宿の大通りですがストリートフラッグを出したりしています。大阪の蓬莱さんでは、肉まん買ってくれたらお茶を上げると言うキャンペーンをやってくれました。
日本のショッピングフェスティバルってそういうことでいいと思うんですよね。皆さんは毎日一生懸命商売していますから、何も特別なことをやらなくてもいいんです。それをそのまま翻訳して海外に伝えるということが第一歩だと思います。
日本では2月、8月に新店がどんどんオープンすることを世界の人はほとんど知りません。あるいは限定商品発売とか新商品入荷、うちにはカリスマ販売員います、みたいな話でさえ世界の人は知らないでしょう。
日本人が当たり前にやっている商売が非常に面白くて、しかし、それが伝わっていない。それを解消しましょうというのが共同プロモーションの考え方です。
時間が少しあるので、小ネタとして免税店の話をしたいと思います。
免税店になった方も、なってない方もいらっしゃると思いますが、はっきり言って免税店はめちゃめちゃ売れています。右下にありますけれど、全体の3分の1の売り上げを免税店が占めています。
"免税店になるということは、外国人ウエルカムのサイン"
日本には1万8000店の免税店がありますが、それは全体のわずか2%に過ぎません。その2%のお店で30%の売り上げを取っている。しかも、ショッピングの売り上げは5割増しですが、百貨店の免税売り上げは、倍増していますので伸張率も高い。
「なぜこんなに免税店が売れるか?」というと8%分がお得だということはあるかと思いますけど、それだけじゃないんです。8%分がお得だとすれば、皆8%バーゲンをすればいいことになる。8%値引いたくらいじゃ売れないということは皆知っていますよね。
じゃあ、なぜ売れるのというと、タックスフリーショップの看板は、「外国人歓迎」という意味が凄く大きいわけです。外国人にとってみれば、日本のショップはどこが外国人歓迎の店なのか全然わからない。
免税店になるということは、「ここは安心して入れるお店なんだ」というサインになるということ。それくらい外国人歓迎というのは伝わっていない。カード端末入れても使えますと出さなかったらわからないですからね。
環境を整備する、整備したら整備しましたと伝えることが、何も分からない外国人には重要です。
小ネタをもうひとつ。
香川県のプロモーションの例をお話します。実は、香川県は去年、日本一外国人観光客を増やした県のひとつです。ここは、買い物好きな20代の中国人の女の子にターゲットを絞ってプロモーションをしました。
プロモーションビデオをまずは作りました。ビデオは、香川県高松市丸亀商店街の真ん中にある「ルイ・ヴィトン」の前から始まります。
ルイ・ヴィトンの前に立った中国人モデルの“ニイハオ”から始まり、家電量販店やドラッグストア、ドンキホーテなどを一緒に撮影し、その後、街中を出て、“瀬戸内海も綺麗です”と言う内容です。このビデオは去年1300万回再生されました。
そうなるとどうなるか。これを見た1300万人の中国の女の子が日本でルイ・ヴィトンを買うなら東京か大阪か香川という現象がおこる。横浜でもなければ、神戸でも札幌でも福岡でもなく香川なんですね。
それほどにまで、海外の人には日本のショップの情報がありません。このビデオを見た中国の方は、「東京と大阪しか知らなかったけど香川って凄いのね、欲しいものが全部あるショッピングパラダイスみたい」となるんです。これは他の地方でもそうなれるんです。
インバウンド売り上げの7000億円のうち6000億円くらいは、東京でなくてもどこでも買える商品。地方の観光都市の周辺に出店されている方なんかはチャンスです。どこで買ってもいいんですから。だけど、そこで買えるということを言わなければ分からないし、買える環境を整えなければ無理です。
さきほど、ビームスさんの話をしました。
ビームスはバンコクに出店しましたが、「バンコクの皆様こんにちは。ビームスです。私達は生活を楽しむことに全力を尽くすプロとお客様からなるコミュニティーです。・・・」という一文から始まる自己紹介文を出されています。すごくいい自己紹介文だと思います。
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こういう風に自分達を紹介しないと伝わらないんですよね。すごくいい例です。
今日お話させていただいたのは、ベースにはまだまだ拡大する海外旅行マーケットというのがあるということ。間違えてはいけないのは、訪日マーケットという話ではなく、国際競争だということです。
インバウンドがこれだけ盛り上がっていますから、皆さんも焦っているかもしれません。上長からは「あそこに負けるな」「なぜうちにできないんだ」「あそこに停まっているバスから観光客を連れて来い」と言われている人も少なくないでしょう。
でも国内競合をやっている場合じゃないんです。先行する各社さんはそれに気付いて、自分達のノウハウをみなさんに伝えてくれます。
Japanshopping.orgには今わずか500店舗しか載っていません。500店舗しか外国の方からは見えてないということです。何万店舗も面白い商品を毎日発信しているんだということにしないと魅力に乏しい。
ドバイは日本の1年分を1ヶ月で売っている。それが世界一なんです。世界中の人は、ショッピングに行くなら、ドバイ、NY、ロンドン、パリ、香港 ・・・となるんですよ。
日本は世界ランキングで30位です。アジアでも8位、香港、マカオよりも下というのが現実です。なので、皆で力を合わせ国際競争の中で勝てるマーケットを作っていこうよと、ということです。
7000億のマーケットは、今年1兆円にいくと思いますが、3兆円、5兆円いけるマーケットなはずです。
ちょっとだけやっていたら2兆円で止まるんです。そうじゃなく3兆円、5兆円を一緒に目指したいね、というのが我々の考えのベースにあります。そのためには、これまで話してきたように、日本を旅する事でしか得られない3つの価値を頭に入れて、自分達の商品を光らせつつ、受け入れ体制も整え、自分達のやっている事を外国語で伝えましょう、ということです。
冒頭の話に戻りますけれど、「インバウンドをやれ」と言っているんじゃないんです。
いや、もちろんやった方がいいと思ってお話してきたわけですが、インバウンド政策という意味でなくても、お客さんの迎え方とか相手の立場に立つとか、改めて考え直してみると、我々商人が知らず知らずのうちに持ってしまった既成概念みたいなものがぽろっと取れる瞬間があると思います。それは、日本人のお客さんにも響く施策のヒントになることもあろうかと思います。
ありがとうございました。