伊勢丹新宿本店の上期売り上げが過去最高 組織顧客と若年層がけん引

2022/10/12 06:29 更新


 伊勢丹新宿本店は22年度上期(4~9月)売上高が6カ月連続でコロナ禍前の18年度の実績を上回り、過去最高の水準に達した。「富裕層だけでなく、特別な日に新宿本店を利用してもらう共感と憧れの店づくりが支持された」(栗原憲二伊勢丹新宿本店長)という高感度・上質戦略が成果を生んだ。

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 売り上げ増は組織顧客と若年層の両者の買い上げシェアが高まったことが要因。売り上げに占める自社カード会員の買い上げは18年の39%から54%へ、同様に外商は12%から15%へ拡大した。20~30代の売り上げ構成比は31%から35%へ高まった。時計・宝飾品のシェアが7%から18%へ高まり、高額品がけん引した。

 同店の高感度・上質戦略はクリエイション、ストーリー性で独自性、希少性のあるハイタッチな商品を先行・限定販売し、感動的な買い物体験を提供する。従来のモノに偏ったMDではなく、「個」の顧客に向けたマーケティングへ深化させる。そのためのステップの一つ目は集客で、新規客を呼び込むコンテンツを強化する。ラグジュアリーブランドの期間限定店の世界先行・限定品の販売を通じて、その世界や話題性を発信し、集客、売り上げ増に結び付けた。

 一方で、コミュニティーに着目し、面として顧客とつながる。アート、コスメ、アウトドアなど次世代のターゲット顧客の興味・関心事をインスタグラムなどSNSを活用して深掘りする。どんな状況下でも顧客に来店してもらうようにする。具体的には子育て世代のニューファミリー層を対象に、新たな中分類を23年度に創出する。

 もう一つは識別できる顧客を増やして、生涯つながるCRM(顧客管理)戦略を強化する。同店の22年上期の会員獲得が前年比2.2倍で、アプリ会員が55万人に達した。買い上げポイントの付与だけでなく、人気催事の会員限定や先行・限定品の優先販売など特別な体験を提供し、入会の動機付けにする。店頭と外商部門が連携し、店舗のカテゴリーごとに配置した専門販売員を通じて関係性をさらに深める。

 コロナ下であってもロイヤルティーの高い顧客の売り上げは復調しており、高感度上質な消費市場を拡大し、顔の見える「個」の顧客とのつなかりを強める。24年度までの中期計画で過去最高水準の売り上げ、利益の達成を目指す。



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