近江麻布の行商を祖業に300年以上の歴史を誇る小泉は、レディスアパレルの小泉アパレルを筆頭に21社を傘下に収める。小泉アパレルで商品企画を長く務めた郷原文弘さんは、小泉アパレルの社長を経て19年、グループを統括する小泉の社長に就いた。小泉は事業構築で不足分野を補完するため、活発なM&A(企業の合併・買収)で傘下企業を増やしてきた。レナウンの主力ブランドやジオン商事の卸ブランド事業の譲り受けも記憶に新しい。異なる文化・風土を持つ各社をまとめ上げる苦労は想像に難くない。現場の苦労を知り、信頼関係に重きを置く姿勢が、多様な企業集団のけん引力となっている。
【関連記事】《トップに聞く》小泉アパレル社長 海原耕司氏 リスク背負い月別MDに挑む
現場に教えを請いながら
――現場を大事にする経営者の印象があります。
私が入社したのは大阪万博のあった70年です。当社の習わしであった新人の物流倉庫勤務と営業を経て、小泉アパレルの前身となる洋品部に配属されました。植本勇(小泉)会長はその時の上司で、この関係は現在までずっと続いています。
私は社長になるまで一貫して商品企画をしてきました。商品企画を始めた当初は、青森から九州まで散在していた縫製工場や生地の製造工場をすべて回りました。倉庫番と少しばかり営業をかじっただけでは何もわからず、知識がないと物は作れないと思っていたからです。
工場に一日中入り浸って多くのことを教わり、理屈と現場は違うことも実感しました。我々は理屈で仕事を進めようとしますが、縫製にしろ染色にしろ、現場は理屈だけではない様々な問題が発生します。現場に教えを請いながら仕事を組まねば、自分の仕事が成り立たないことを学ばせてもらいました。この経験は今でもずっと生きています。
営業で取引先を訪れるにしても、商品知識に自信がなければ相手が怖く思えます。取引先よりも生産現場に多く足を運んだのは、取引時に恐れをなくす意味もありました。工場の方々も自分たちの仕事をきちんと理解してほしいというスタンスでしたから、私の訪問を快く受け入れて下さったことを覚えています。
――海外生産の拡充に尽力したと聞きます。
この記事は有料会員限定記事です。繊研電子版をご契約いただくと続きを読むことができます。
すべての記事が読み放題の「繊研電子版」
単体プランならご契約当月末まで無料!