注目のメンズコスメ市場 肌測定やメイクを記者が体験

2019/09/23 06:30 更新


 メンズコスメにおいて、肌測定サービスやメイクのタッチアップ体験などのサービスが充実してきた。昨今、様々なメーカーやブランドがメンズラインを作るなど、選択肢の幅も広がったことでメンズコスメ市場が注目されている。百貨店でも伊勢丹メンズ館や阪急メンズ東京が、今年3月の改装の際にコスメ売り場を拡大したり、専用の接客カウンターを設けたりするなど力を入れている。

 肌診断やメイクのタッチアップを体験してからの購買率とリピート率は高く、メンズコスメの入り口のハードルを下げることに役立っているという。男性客は、メイクをする意義や理論を求めがちだ。目で見える変化と、数値で示すことで納得した購買につなげられている。

(海藤新大)

◇伊勢丹メンズ館 ブランドを横断した提案

 伊勢丹メンズ館は、3月の改装で開館当初から1階にあったメンズコスメの売り場を大きくし、入り口から真正面の位置に移動した。取り扱いブランド数も増やし、現在では約45ブランドを取り扱っている。大きく変えたのは二つの接客カウンターの導入だ。入り口からエスカレーターまでの動線の近くにはテスターや洗面台のスペースを設けた「トライアルスペース」を設置した。「まずは知ってもらうことが大事」(伊勢丹メンズ館)と、ここで気軽にテスターや肌測定などを試してもらう。スキンケアの専門の資格を持った男性コンシェルジュが土日には常駐し、アドバイスもしてくれる。

洗面台を多数設置したほか、接客カウンターを二つ作った

 記者も肌測定を体験してきた。専用の測定器を頬に当てるだけで測定でき、3分ほどで結果がでた。年齢に対しての毛穴の大きさや黒ずみ、シミの量、キメの細かさを数値で測定。水分量と油分量のバランスも測定し、ノーマル、オイリー、ドライ、オイリードライの四つの中から肌がどの状態か示してくれる。ほとんどこれまでスキンケアなど考えていなかった記者の結果は散々なもので、総合スコアが3.0が良いとされる中で2.7という結果だった。肌の状態はドライで乾燥肌だということがわかった。やはり数値で示されるとこのままではまずいという緊迫感がある。

カメラ付きの小さな測定器で肌に当てるだけで手軽に測定

 測定後は、伊勢丹メンズ館が独自に作成したブランドマップから、結果に合わせてどのブランドが合っているかという提案もしてくれるためわかりやすい。さらに各ブランドごとに販売員がいるため、そのブランドでより詳しい説明も受けられる。一度測定を受けると購買率が高いのもうなずける。リピート率も高く、数値が改善されていくことで使用した効果が目に見えてわかることが大きな要因だ。

手軽ながらも結果は詳細。何色が合うかまで分析してくれる

 もう一つのカウンターは「コンサルティングスペース」と呼ばれ、より深いお悩み相談ができる。予約制で1人1時間ほど。利用者の層は肌に悩みを抱え始める40~50代が多く、特にシミの悩みを相談に来る客が多いという。また、役職に就くことが多い年齢のため、人前に立つ機会が増え、「肌を気にせざるを得なくなった」という声も多いそう。とはいえ、「まだまだ認知度は低い」。「知ってもらい、続けてもらうことが重要。ファッションも肌もきれいに整えることでトータルでお客様のステージをちょっと上にするお手伝いができれば」という。

◇阪急メンズ東京 「盛る」ではなく「整える」

 阪急メンズ東京も3月の改装で化粧品売り場を大きくした。メンズコスメの「ラボシリーズ」による肌測定のカウンターや「ファイブイズム・バイ・スリー」によるメイクのタッチアップスペースなど、体験型の取り組みを強化している。阪急メンズ東京では、その肌測定とメイクのタッチアップの一部を体験した。

「ラボシリーズ」の肌測定。きちんと当てていないとやり直しになるため正確に測れそう

 まずは、ラボシリーズの肌測定。こちらも専用の測定器を肌に当てるだけですぐ測定できる。キメの細かさ、油分、角質の状態、水分量とハリを測定。年齢に対してA、B、Cの3段階評価で示してくれる。こちらも記者の結果は無残だったので割愛。数値の結果から肌に合わせたお薦めの商品を選んでくれ、どのように使うかまで実際にその場で体験しながら説明してくれる。利用者は20~40代が多く、最近では若い世代が特に伸びているという。カップルや夫婦で来る客や、友達の紹介で1人で来る客もいる。

 次に「ファイブイズム・バイ・スリー」のメイクのタッチアップを体験した。メイクというと女性のメイクのようにキラキラで「盛る」ようなメイクをするイメージをしていたが、その認識は間違っていた。「盛る」のではなく「整える」のが男性のメイクなのだという。

「ファイブイズム・バイ・スリー」のメイクタッチアップ体験

 15色の中から自分の肌に合った色のファンデーションを塗る。次にコンシーラーで目元のくまなどを隠す。こちらは全部で6色。輪郭をくっきりさせるハイライトとローライトも付けてもらい、リップとアイブローも付けた。最初は少し抵抗感もあったが、付けてみると意外と違和感のなさに驚いた。化粧している感じはないが、肌がきれいに見える。まさに「整える」ことを目的としたメイクだった。実際はまだフルメイクまでする男性は少ないが、シミやしわを隠すポイントメイクまではする男性が増えていているという。

 取材を通して、実際に体験することで確かに納得し、肌に対する意識が高まった。「年々客単価が上がっている」(阪急メンズ東京)というように一度体験するとどんどんこだわりたくなる。若い世代では、韓国アイドルなどの影響もあり、メイクも抵抗なく受け入れる層が増えている。今後、ますますメンズコスメの市場は拡大していくだろうと感じた。

「メンズビューティー」売り場はフレグランスゾーンとコスメゾーンに分かれている

(繊研新聞本紙19年8月9日付)



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