《めてみみ》潜在需要をつかむ

2019/02/26 06:25 更新


 あるインポートブランドの卸企業で聞いた話。日本に進出して10年近くになる、あるブランドのネクタイの販売量がここ1、2年で急に増えだした。フィレンツェの工房で少人数の職人が作るこだわりのブランドだ。

 そこのネクタイは、製造工程が全て手作業で、シルク生地を七つ折りにして作るため、用尺も普通のネクタイより多く必要で、値段も1本3万円以上。万人向けではないが、クラシックなスタイルを好む大人向けにと導入した。

 しかし発売直後に震災があり、オンタイムでネクタイを締めるビジネスマンがどんどん減り始めた。品質の高さを強調して営業に回ったが、時期が悪く、仕入れに積極的な店は少なかった。宣伝しようにも広告にかける予算もない。

 そこで思いついたのが「インスタグラムに商品写真を上げる」という手段。毎シーズン出す新柄や、それを付けて楽しむ人たちの装いを投稿し続けた。それがクラシックなネクタイのマニアックな愛好家たちの目に留まるようになった。

 その後、わずかな卸売り先の店での販促イベントに少しずつ客が集まるようになった。売れる本数も大きくなり、百貨店や専門店の販路が広がり始めた。今では「父親に教えてもらった」と若い世代の客も買いに来るという。SNSを使ってニッチな潜在需要を掘り起こした好例と言える。



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