コロナ下で空床問題が深刻な大都市圏の商業施設にとって期間限定店を開設してくれる新興ブランドの存在が欠かせなくなったように感じる。これは大手企業が不採算ブランドの撤退を進めた結果、売り場が歯抜け状態になったことが大きい。今のところ新規出店や多店舗化に意欲的なブランドも限られる。
新興ブランドの中には同時期に東京や大阪など様々なエリアで10以上の期間限定店を運営する会社もある。そこは立ち上げた自社ブランドが今年で10周年を迎え、OEM(相手先ブランドによる生産)から脱却して主力事業に転換できた。突き抜けた個性を持つブランドとして地道にファンを増やしてきた結果だろう。
館側の休業や集客力の落ち込みなど厳しい環境を耐え、百貨店との信頼関係を高めて乗り越えてきた新興ブランドも出てきた。都内百貨店を中心に定期的に期間限定店を継続してきたメンズブランドが今秋、初の常設店開設に踏み切った。地方の個店などに卸販売してきた小さな会社にとっては大きな挑戦だっただろう。
首都圏の大型商業施設というファッションの大舞台で、ブランドの世代交代が始まりつつある。かつてのように拡大路線一辺倒でなく、ニッチでマニアックでも熱量の高いコアなファンに支えられた小さなブランドが輝ける時代に変わっていきそうだ。