カジュアルなパンツを購入する際、中年太りのウエストに合わせると裾上げが必要になる。自宅で縫ったりもするが、しっくりこない場合が多い。だからと言って、お直し屋にお願いすることも少ない。地元の駅前やショッピングセンター内で見かけるし、身近な存在ではあるのだが、ついつい後回しになりがちだ。
しかし、記者の仕事では、以前からお直し事業者に注目している。数年前から東京の高級な洋服リフォーム・リメイクをする企業は、オーダーメイドスーツやシューズなどのサービスに力を入れるなど事業を多角化してきた。業界の課題である人手不足の解消のため、人材育成の事業も始めた。
郊外の住宅地にあるジーンズリペア店のオーナーは、大手お直し屋チェーンのFCをスタートした。「普段、マニア向けの商売ばかりだったが、FCで幅広い客層との出会いを重ねることで、お直しの可能性を再確認できた」という。ただし、従来型の事業には課題も多く、お直し業界は転換期を迎えている。リメイクなど付加価値型の新規事業に挑戦する企業も目立ってきた。
愛着のある服を直しながら長く着続けることはSDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも通じるはずだ。そうした生活者の思いをサポートできるようになれば、お直し屋の存在意義も今まで以上に高まるだろう。