《めてみみ》みけつくに

2022/08/17 06:24 更新


 淡路島は古代から平安時代にかけて御食国(みけつくに)と呼ばれた。京都の朝廷に、海産物を中心とした御食料(みけりょう)を貢いだ美食の地として名高い。今も明石海峡大橋経由の京阪神からのアクセスも良く、週末には海や山の幸を求める観光客でにぎわう。

 近年、新しい観光施設のほか、宿泊・グランピング拠点や貸別荘などが相次ぎオープンし、観光客が増加。コロナ下のテレワーク増などに対応し、パソナグループが本社機能を淡路島へ移転すると発表したことも記憶に新しい。比較的静かだった西海岸が注目を集め、インスタ映えすると話題のパンケーキ店などは平日でも行列を成す。

 近代の淡路島は繊維産業の一大産地だった。多くの縫製工場があり、洲本市には日本最大級だった鐘紡の綿紡織工場もあった。往時には精紡機13万錘弱、織機2400台を持ち、戦後でも4200人の社員を抱えていた。工場跡は今、レストランやショップ、図書館などに活用されている。往時の活況は想像するしかないが、紡績工場や原綿倉庫だったれんが作りの建物が残り、近代化産業遺産にも認定されている。

 新しいショップや宿泊施設が注目されるのは悪いことではないが、やや投資に過熱感も出てきた様子。一時のブームに終わることなく、長い歳月を経ても記憶や形に残るような遺産を築き上げて欲しいものだ。



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