《めてみみ》勝ち残ったとしても

2022/08/24 06:24 更新


 米中貿易摩擦やコロナ禍、人手不足などを背景に国際海上輸送の混乱が続く。原油高も加わり、海上運賃は高止まり状態にある。コンテナ不足もなかなか解消しない。世界のコンテナ生産の約90%を中国が占めているが、増産もなかなか進んでいない。

 海運業界はかつてない好景気に沸く。今3月期の業績は、最大手の日本郵船の純利益が初めて1兆円を超えたのをはじめ、商船三井7088億円、川崎汽船6424億円といずれも過去最高レベル。4~6月の日本郵船の純利益は2・2倍と、まだ勢いが続く。その利益額の大きさには圧倒される。

 海運業界も厳しい淘汰(とうた)の荒波をくぐり抜けてきた。明治時代の三菱と共同運輸は歴史に残る生存競争を繰り広げたし、戦後も企業の淘汰が進んだ。64年に11社あった日本の海運大手は、89年に5社、99年に現在の大手3社体制へと集約されている。

 アパレル業界ももう一段の淘汰が進みそう。ある経営者は原料高、円安、賃金上昇など「5重苦、6重苦…、厳しいどころか、どこが生き残れるかというレベルに来ている」と嘆く。しばらくは、歯を食いしばっての生存競争が続くのだろう。問題は、最後まで土俵に残った企業が応分の利益を享受できるか否か。海運業界には及ばないにせよ、業界全体での根本的な利益構造の改革が不可欠だ。



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