三越は今年、創業350周年を迎える。呉服店「越後屋」として1673年8月に誕生したのを記念し、4月に開催する「三越創業350周年大創業祭」を皮切りに24年3月末まで、「伝統を超える革新性」をテーマに全国の各店で様々な企画を実施する。350年の先を見据えた特別な価値を提供する。
三越呉服店の専務だった日比翁助は1904年に「デパートメントストア宣言」を発し、日本で初めて百貨店という業態を目指した。従来の仕入れから販売までの商習慣を否定し、「公衆の利益を最優先する」「フェアプライス」など経営理念を転換して百貨店の基礎を築いた。
三越は自らを変革することで、様々な困難を乗り越えてきた。根底にあるのは、創業から変わらない「お客様第一」だ。事業活動を通して、単に利益を上げるだけでなく、地域、社会の貢献に力を注いだ。今、改めて百貨店の役割が問われている。消費は成熟し、価値観が多様化した。様々な業態が生まれ、百貨店が同質化した。
ファッション中心から、日本文化の発信拠点へビジネスモデルの変革が迫られる。モノではなくコトを通して、楽しい、癒やし、遊べるなど暮らしをより豊かに彩る次世代の百貨店の創造が欠かせない。常識や壁を乗り越えてこそ革新が生まれた。三越の歴史から学ぶことは多い。