大阪と奈良を結ぶ主要道の一つが「龍田越え」。万葉の時代から貴人たちが行き来し、今も大和川と並行して国道25号やJR関西本線が走るなど、交通の要衝だ。その途中には、川幅が一気に狭くなる亀の瀬という難所がある。
ここは昔から地滑りが多く、土砂が大和川を塞ぐのを防ぐため、長年にわたり、大規模な対策工事が行われている。15年前の工事では、80年前の地滑りで放棄された大阪鉄道時代のトンネルが偶然発見された。明治時代のれんが積み、蒸気機関車のすすが残る天井などがそのまま残る。
その後、龍田古道、亀の瀬は日本遺産に認定。最近では、週末にトンネル内で行われるプロジェクションマッピングが人気のスポットとなった。古道が結ぶ大阪府柏原市、奈良県三郷町は、この資産を地域活性化に生かそうと、19事業所23商品を選定し、日本遺産推奨商品「もう、すべらせない‼」ブランドとしてアピールしている。
かつての柏原市は注染の一大産地だった。今は数少なくなったが、同ブランドには注染手ぬぐい数点も登録されている。地域活性化が叫ばれているものの、行政や組合・団体の制約に阻まれ、思うような事業展開ができないケースも少なくない。異なる府県の自治体・事業者が協業し、点から線、さらに面へとつながるような好事例としたいものだ。