伝統工芸をアップデートして残そうと奮闘する人々が目立つ。昨年末に東京・南青山に初の路面店をオープンしたミゼン(東京)は日本の伝統技術を生かしたファッションで次世代ラグジュアリーを目指している。紬などの呉服生地を使い、有力メゾンのデザイナーだった寺西俊輔代表がディレクションを手掛ける。
ミゼンは通常は縁の下の力持ちで終わりがちな職人が主役になれるラグジュアリーブランドを作るプロジェクト。世界に向けて発信し、高度な技術を持つ職人の地位向上と産業の持続可能性を高める狙いがある。職人と消費者をつなぐプラットフォームとしての役割を担う。
地方の小さな工場でも、伝統工芸を再利用した新規事業に挑んでいる。足袋の産地として有名だった埼玉県行田市の縫製業、角倉繊維はコロナ禍でのマスク生産・販売をきっかけに、アップサイクル型の自社ブランドをスタート。未使用のデッドストックのきものを解体して生地として使い、一点物のシャツを開発した。
きものをアップサイクルした商品は祭り用品の鯉口シャツを作ってきたノウハウを生かしたという。普段の生活では触れにくくなった伝統工芸の生地に新たな命を吹き込むことで、身近な存在として次の世代に愛用されるようになる。その先に技術継承の道が開かれるのではないだろうか。