76年に放映されたテレビアニメ『母をたずねて三千里』は、イタリアの少年マルコが音信不通となった母を追って異国を旅する物語。舞台は19世紀後半のアルゼンチンだ。当時、世界トップクラスの経済大国だったアルゼンチンへ、マルコの母と同じように欧州から多くの人が出稼ぎに出た。
日本もかつては、海外への出稼ぎが盛んだった。明治から昭和初期にかけ、ハワイ、米国本土、カナダ、南米に多くの農業移民が渡り、その子孫らが今も現地で暮らしている。意外なのは、戦後になっても政府の海外移住政策が続いたことだ。51~84年までに約26万人が北・中南米、豪州に移り住んだ。
現在の日本は一転、外国人労働者を受け入れている国だ。高度人材は5万5000人、技能実習生は45万人、特定技能は28万人以上が在留し、建設、食品、介護、農業、外食など、この国のあらゆる産業を支えている。繊維産業も縫製、織り・編み、染色など、外国人労働者がいなければ現場は維持できない。繊維では今年から特定技能の受け入れがスタートし、さらなる人権対応や賃金アップが求められている。
最近はインバウンドの増加も重なり、訪日・在留外国人に関するさまざまな意見が飛び交っているが、異文化が共生できる社会であってほしい。マルコや母の異国での苦難を思い浮かべながら、思う。