「モードの世界では季節や気温よりも、クリエイションを重視しているので、顧客の先買いは変わらない」とは、先日取材した国内外のハイブランドを扱う都内セレクトショップのオーナー。しかし一方で、中間価格帯を購入する客層は実需型にシフトしているという。
いずれにせよ仕入れの変化は避けられないようだ。その店では暑さが長期化していることから、秋冬物でTシャツや半袖シャツを増やしている。ただし、打ち出しはそう簡単ではない。7月以降に店頭で秋の新作Tシャツを販売していても、夏にセールがあるため来店客から「これは売れ残りの値下げ品ですか」と聞かれるなど、新鮮味に欠ける。
従来の「春夏」「秋冬」といったシーズン区分はあくまで作り手の都合で生まれたもので、セールも同様に売り手の都合によるもの。買い手には関係ない。では、新鮮味を出せるシーズン区分やセールの時期はどんなものがあるだろうか。そもそもセール時期を設けたり、シーズンを区切ることがもう間違っているのかもしれない。
商品のクリエイションと同様に、どんな商品をどのタイミングで、どうやって売るのかも大事だ。先買いする楽しさを消費者に提供しつつ、今すぐ欲しい需要にも応える。そんな絶妙なタイミングを店頭で表現できるかどうかが、腕の見せどころになっている。