埋もれないために(柏木均之)

2013/10/23 14:36 更新


柏木です。

仕事柄、取材で新店のオープニングにお邪魔させてもらうことが多いです。どのお店も新しく開いたお店にお客様がしっかり定着するよう、オープン時にはいろいろイベントを催したり、購入者に何らかのノベルティをプレゼントするとか、しています。

先日、紹介したジャーナルスタンダード表参道の「ユーペイ・スピナー」なんかもそうですね。

 

 

 

ちなみに、これはアーバンリサーチのドアーズというお店のオープン時にいただいたノベルティ(?)です。

写真ではすでにジャーマンポテトに姿を変えてしまっていますが、もらったのはジャガイモ。実はアーバンリサーチは最近、このドアーズの新店オープンやポップアップストアをやるときに購入客に野菜をプレゼントすることがあります。

消費者が思い描く生活や日常に寄り添う存在であるために、服だけでなく、ライフスタイルを提案する、っていうのが、ファッションを売る店の課題になっているようですが、同社の場合、ファッションももちろん売るのですが、同時に「食」も切り口にすることで、消費者との接点を広げよう、ということのようです。

取材の際、じゃがいもをくださった斉藤さん、ありがとうございました。

 さて、上述したようなやり方を含め、ファッションの小売業で、ライフスタイル提案を強く意識した店作りが増えている理由は、いくつか考えられますが、1つは、日本の市場が非常に過密状態にあるから、だと思います。

それがどういうことか、というと、2012年の日本の衣料品消費市場の規模は、金額ベースで、約8兆9000億円。前年よりは若干増えているのですが、中長期的には減少傾向にあって、10年前(03年)に比べると3.4%減少しています。

ん?減っているのに、何故市場が過密なのか、と思われる向きもあるかもしれませんが、こういうことです。

数量ベースで見ると、2012年に市場に供給された衣料品は、40億点。これは03年対比で見ると、13%増加しています。

つまり、衣料品消費市場の金額が減って、供給数量が増えた、ということは、服1枚当たりの値段が下がって、しかも市場で流通する量が増えた、ということです。

要するに、値段が下がって量が増えてるっていうのは、競合が激化している、ということです。

供給が氾濫し、どこででも、安く服が買える、という環境下で、値段以外の価値でファッションを売ろうとする店には、消費者に自店を選んでもらうためにも、他の店では体験することのできない独自の切り口が必要なわけで、たとえばジャガイモはその1つの方法論、ってことなのかもしれません。

ちなみに、ここでお届けした市場分析のデータの詳しい内容は、25日(金)付から毎月2回のペースで連載をスタートする、繊研新聞本紙の「ファッションビジネス・プロフェッショナルへの道」で報道します。日本のファッション市場を数字で把握したい、という方は、ぜひご一読ください。

では、また。

(繊研新聞=お申込はこちら)




かしわぎ・まさゆき 20余年にわたり、川上から川下まで取材をしてきた記者が1億コ(自己申告)のネタから選りすぐりを披露します。編集部記者。92年入社、大阪支社で商社など川上分野とアジアを長年取材。02年に東京本社転勤、現在、セレクトショップや外資系チェーン店などを担当。統計資料なども司るデータ番長




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