元デザイナーは「世界変える」アーティスト いま注目の若手・長坂真護さん

2020/12/09 11:00 更新有料会員限定


ガーナのスラムを訪れ、衝撃を受けたという

 長坂真護(ながさか・まご)――いま注目の若手アーティストだ。ガーナのスラム街で拾った電化製品の廃棄物を使い、スラムの人々を描いた作品は1000万円以上の値がつくこともある。作品を売った収益でガーナの人にガスマスクを贈り、現地に絵の学校も開いたが、「僕がやっているのは慈善事業ではなく、サステイナブル(持続可能な)ビジネス」と言い切る。もともとファッションデザイナーで、アパレル会社を経営していたという異色のキャリアを持つ彼は、〝利他〟に目覚め、世界を変えるアーティストになった。

(中村恵生、写真=福田秀世)

 まっすぐこちらを見つめる黒人少年の絵は、ゲーム機のリモコンや電子基板、携帯電話などの廃材が周囲にちりばめられている。「真実の湖Ⅱ」というタイトルがつけられたこの作品は、先進国が生んだごみの中で暮らすスラムの人そのものだ

スラムの人々をモデルに、廃棄物を使って作品を作る

ガスマスクが欲しい

 モチーフに使っている廃材は、ガーナのスラム街、アグボグブロシーで拾い集めたものです。もともと湖だったこの場所は、先進国が持ち込んだ膨大な電化製品のごみで地平線近くまで埋めつくされ、歩くとウォーターベッドのようにぶよぶよしていました。スラムに暮らす人々はこのごみを燃やし、残った銅線や金属を売って生活をしていました。

 ここを初めて訪れたのは17年のことです。海外を旅している時にスラムの話を聞き、第六感のように「行かなきゃ」って思った。何のつてもなかったけれど気づいたらチケットを買い、3万人が暮らすこのスラムに来ていました。ごみを燃やす時の有毒ガスのせいで彼らの平均寿命は短い。僕はガスマスクを着けていたのですが、帰国する時、彼らは「ガスマスクが欲しい。死にたくない」と僕に訴えたのです。

ガーナのスラムの話を聞き、気づいたら現地に飛び込んでいた

 世界の闇を目撃し、大量消費社会に嫌気がさした。社会と隔絶して仙人のような暮らしをするのか――否。長坂はビジネスを通じてスラムの人々を救う方法を模索した

先進国が使った電子機器のごみを燃やし、金属を取り出す現地の人々

油まみれの彼らを表現する

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