大阪アパレル物流協議会 人材確保・省力化に全力挙げる 「2024年問題」に強い危機感

2023/04/28 06:27 更新


大阪のホテルで開かれた定時総会

 大阪アパレル物流協議会(OAP、会長=堤幸信ワコール流通社長)はこのほど、大阪で年次総会を開催した。トラックドライバーの残業規制による輸送能力低下などの「2024年問題」、物流現場での人手不足に大きな危機感を表明。OAPとして、職場・労働環境の改善による人材の確保、省力化・効率化へ向けた新たな機器の導入、メーカーと小売業が一体になった物流改革への取り組みなどに全力を挙げていく。

 OAPは正会員24社、賛助会員16社、後援会員28社などで構成。全産業で人手不足が深刻化するなか、OAPの主要メンバーであるアパレルメーカーが抱える物流現場への懸念は強まる一方だ。社員、パートやアルバイトだけでなく、次世代を担う工業高校系の新卒者は、業種を問わず人材の争奪戦が始まっているという。OAPとして、福利厚生面の整備、賃金水準の向上に努め、「魅力ある職場を作っていくことが急務」(堤会長)となっている。

 従業員の待遇改善には、1人当たりの生産性向上が課題。様々なマテハン機器の導入、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応強化、省力・省人化、生産性の向上が不可欠となる。OAPでは、課題解決のための情報共有化、行政や流通への働きかけを強化している。今回の総会では、個社の取り組み事例として、ワコール流通と福助ロジスティクスのケースも紹介した。

 ワコール流通は、滋賀県の守山流通センターに、物流現場における人や物の流れを可視化できる「動作分析ソフト」を導入。これを応用して、効率的な棚割り、最終出荷場所のロケーション変更などを進めた。「アンフィ」と「ウンナナクール」で取り組んだ結果、1時間当たりの出荷量は237枚から277枚へと向上。人員は42人から4人減少するなど、作業効率が大幅に改善した。今後こうした成果を広げ、待遇改善などに生かしていく。

 このプロジェクトを主導したのは、20歳前後の女性2人。総会での2人の成果発表を、地元の高校にウェブ配信する初の試みも実施した。若い女性が活躍できる職場として学校側にワコール流通をアピール、新卒人材の確保、地域社会の一員としての企業イメージ向上にもつなげていく。

 福助ロジスティクスは、コンテナから貨物を取り出すデバンニング・検品スキャン・棚入れ工程を担う現場に着目。冷暖房が無く寒暖差が激しい過酷な環境で、人が集まりにくい職場の一つだ。第1段階として、検品スキャン工程の無人化を目指した。画像自動認識によるバーコードスキャンを導入、運用を軌道に乗せている。人員削減によるコストダウン効果だけでなく「働きやすい職場環境を作り、楽しく仕事をすることで日本中に『福』を届けていく」という福助グループの理念に基づく。

 同社はこれまで福助の靴下などを中心とする自社物流が主だったが、4月から独自のホームページを開設。「ロジスティクス・ソリューション・プロバイダー」を掲げ、親会社である豊田通商が持つトヨタ式の物流ノウハウを融合しながら、外部への物流サービスの提供も進めていく考えだ。



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