合同展「プラグイン/エディトリアル」(繊研新聞社とCREDITSの共催)がきょう、東京・渋谷のヒカリエホールで開幕する。出展企業は前回の24年10月を上回る99社で、ブランド数は大幅に増えた。新ブランドのお披露目が多いほか、東京ファッションデザイナー協議会(CFD)、韓国発ブランドを集積する「ナルダ」、コスメビューティー&ケアの合同展「クロスロード」エリアなど、集積エリアが拡充したためだ。変化する市場で生まれた新しい消費者ニーズに、高品質と独自のこだわりで挑む。
(カッコ内はブース番号)
CFDエリアは新顔含む10ブランド出展
CFDエリアはウィメンズ、メンズ、ユニセックス、レディスバッグの10ブランドが揃う。初披露の新ブランドから立ち上げ2、3シーズンのブランド、実績のある中堅が代表的なサンプルを展示する。
「ドアトロク」(CFD-07)は今シーズンからのスタート。卒業後2年の同級生2人が作るストリートウェアは、鍵の持つ〝対立と共存〟がテーマだ。前合わせ部分のレイヤーパターンや、タブを複雑に組み合わせた独特のディテールのアウターなどがある。

「ファド・ディストーション」(CFD-09、10)は岩田紗苗が手掛ける手編みを中心としたウィメンズブランド。ファド(FAD)はFor A Day(その日)の頭文字で、ディストーションは、ねじれのこと。日々揺れ動く感情の琴線に触れる服をテーマにする。かぎ針編みなど手作業の作り出す編み地や立体感、シルエットによるコンテンポラリーなレイヤードスタイルが中心。


「ユートリーク」(CFD-02、03)は独自の製品染めが印象的なエルガンスブランド。海外のランウェーショーの経験もあり、ひねりの利いたディテールも特徴だ。ジャカードや氷を使った特殊な染めのシアー素材を使い、長く着られる商品作りを貫く。ブランド名はノルウェー語で表現を意味するユートリックが由来。感性と感情の表現、見せたい自分の表現がファッションだとして、高揚感がわくような服作りを目指している。


「フレキシブルヴィジュアルスペース」(CFD-11)はデザイナーのJohn June Jamesが設立したデザインプロジェクト。柔軟でクリエイティブな自己表現をコンセプトに、独自の色使いや着る人の自由な解釈、アートとファッションの境界を超えたデザインが特徴だ。素材や製造でもサステイナブルを意識したアプローチ、ジェンダーフリーの対応を披露する。

初出展はほかに、パッチワークを得意とする中堅カジュアルブランド「ロウランダー」(CFD-08)がある。
前回からの継続出展は、「ジュンオカモト」(CFD-01)、「マリコ」(CFD-05)、「アロル」(CFD-04)。ジュンオカモトの25年秋冬コレクションは、オーロラをイメージした。グラデーションカラーのジャンパースカートとワンピース、モヘヤをビンテージのような風合いに編み上げたニットトップなど。
モード・エレガンス・アートをコンセプトにするマリコは、この秋冬もカッティングやディテールが光る大人の女性のレディスウェアを提案する。

アロルはAI(人工知能)シミュレーションで、〝セルフ・クチュール・バッグ〟の体験を披露する。バッグのボディー、フラップ、ストラップを自由に組み合わせられて108通りにカスタマイズできるアクセサリー感覚のバッグだ。

■CFD代表理事・議長 久保雅裕さん 小売企業は隙間市場に挑戦を
小売企業で新規ブランドを導入する動きは弱いが、ラグジュアリーブランドの価格上昇で生まれた隙間を埋めるブリッジゾーンへのニーズが高まっていると感じる。
その選択肢の一つに高品質、主張のあるドメスティックデザイナーがなりうる。オリジナル商品比率を若干下げてでも、仕入れ枠を増やして新市場にトライしてほしい。
セレクトショップ「ナルダ」 韓国のライフスタイルを発信
「NARUDA」(ナルダ)(F-01)は日本初登場。韓国ブランドのセレクトショップで、一つの業態として出展するだけなく、アミアズ、クレディッツ、コムラダス・プロジェクトの3社が組んでブランドの成長、育成をトータルに支援する事業だ。
業態名は韓国語の「運ぶ」を指し、韓国ブランドを編集して韓国のライフスタイルを日本市場に運び込んで紹介する。ナルダ内での品揃え期間中にマーケティングからPR、卸先の開拓、輸出・通関業務などをサポートして育成。単独で期間限定店が出せる段階になったら、店舗運営や販売員の派遣などとトータルに成長を支援する。
今回、披露するのは事前選出を経た日本未進出の11ブランド。アパレルが「ILROZE」、「PAHWAY」「CONTOURSONG」「PPB」の4ブランド、バッグが「ATHO」「RIHO」「ETH」の3ブランド、アクセサリーは「NUTEMPO」、フェムテックで「LACTOmedi」「entero」「DRGRFT」の3ブランド。主力はインターネットで販売する新興ブランドとなっている。
ILROZE(イルロゼ)はバンタン東京校卒のデザイナー、イ・ヒョンウォンが23年に立ち上げた。すでにニューヨークでショーを開き、期間限定店は韓国以外にフランスでの実績もある。ブランド名はIndividual(個別的な)、Luxury(高級)、Refinement(繊細さ)、Originality(独創性)、Zeal(熱情)、Elegance(優雅さ)の頭文字で、社会生活を活発に楽しみ、社会に影響力のある専門職で働く30、40代女性がターゲット。商品はいずれも高級素材を使い、高品質で上品、洗練されたデザインで「凛(りん)としているけれど、目立ちすぎない」スタイルを提案する。

パイロット「ユダンギ」 文具メーカーがアパレル開発
筆記具メーカーのパイロットコーポレーションが「創造のための日常着」をテーマに初めて手掛けたアパレルブランド「ユダンギ」(H-45)。社名にラボ(実験室)を重ねたプロジェクト「ピラボット」のチームが、人と創造力をつないで自由に多様な試みを行う未来創造実験室としてこのブランドを開発した。
開発テーマは「仕事、家庭、趣味と様々な顔を持ちながら、毎日を創造的に生きる人に寄り添える衣服」。目指すのは「思わず〝油断〟してしまうほど着心地が良く、仕事や家庭と生活の様々な場面で、きちんとした感じもあって着回しできる日常着」だ。
そのコンセプトを実現するために、素材は肌触りが良く、ソフトで光沢感のある上質なウールを使う。ストレス感の少ないゆったりとしたシルエットで、縫製、副資材に至るまで国産で丁寧な作りにこだわる。
高級感があり、すっきりしたシルエットで着用シーンが限定されないベーシックなTシャツ、背中にタックを入れて動きやすさと膨らみを出したラウンドヘムの長袖Tシャツ、肩と背中のギャザーが作り出すドレープが印象的なバンドカラーのギャザーシャツと、シルエットやデザインにもこだわっている。
