繊研新聞社は10代前半~20代後半の男女に、環境問題に対する意識やファッション消費についてのアンケート調査を行った。彼らは学校教育でサステイナビリティーやダイバーシティー(多様性)などを学び、ネットを通じてたくさんの情報に触れる機会も多い世代だ。社会問題に対する関心が高いと言われているが、実際はどうなのか。ファッション消費では、どのような購買行動をとっているのか。1252人の声から読み解く。
環境配慮型商品についてどう感じる?
リサイクル素材を使った環境配慮型商品やフェアトレード(公正取引)製品についてどのような印象を持っているかを聞いた。様々なブランドがサステイナブルな商品を発売しているが、価格やデザインへの不満により購入に至らないケースが多い。
環境問題を意識して行動していることは?
若い世代は環境問題に対して何か具体的なアクションを起こしているのか。購入するときのポイントや使わなくなった服をどうしているのか聞いた。環境を意識したわけではないが、商品を長く使ったりフリマアプリで売ったりしている人も多い。
環境配慮における理想と現実のギャップは?
ファッションにおける環境配慮について理想と現実のギャップを感じることはあるのか。半数近くが少なくともギャップを感じるという結果になった。環境に優しい商品であるに越したことはないが、自身が着たいと思える価格やデザインではないという意見が多い。
若者のリアルな声
お金が無いので安いものしか買えない(20代前半)/どれもシンプルで欲しいと思わない(10代前半)/どれが環境にいい服かわからない(20代後半)/言葉で言うのは簡単だけど、実際の取り組みが見えない(20代前半)/新しいものを作っている時点で、本当に環境配慮しているとはいえないと思う(10代後半)/フェイクレザーってほんとにエコですか?(20代前半)/安くてデザインさえ良ければ、サステイナブルな商品を選びたい(20代後半)/ブランドのプレミアムラインの中で環境に配慮した商品が増えていて、モヤモヤする(10代後半)/SNSではファストファッションを紹介する人であふれている(10代後半)/良くないと分かっているけど、安い服を買い続けている(10代後半)/サステイナブルな商品は高い(10代後半)
実際によく買うブランド 1位は〝古着〟
若者はファッションアイテムを購入する際、何を重視するのか。「実際によく買うブランド」と、その理由を聞いた。1位は〝古着〟だ。「安いから」という理由に加え、「一点物が好き」「手頃かつ掘り出し物が多い」という理由が多く挙がった。他は「ユニクロ」「ジーユー」「ザラ」が上位だった。手頃な価格で、かっこいいアイテムを買いたいという気分が強いようだ。
「使わなくなったアイテムはどう処理しているか」の質問には、「フリマアプリやリサイクルショップで売る」という回答が一番多かった。「捨てる」と答える人は少なく、「知人に譲る」など何かしらの形で再利用につながる方法を考える人が多かった。
《デスクの目》意識が消費に表れるのは、これから?
日本経済が低迷し、失われた30年とも言われる時代に生まれ育った世代は、環境問題に関心が高く、消費傾向にもそれが表れると予想されてきた。それ以前の世代に比べ、世界的な社会課題について教育される機会が多く、センター試験でもフェアトレード(公正取引)などが取り上げられてきたからだ。今回の繊研新聞社の意識調査では、そのイメージとの差が大きく出たように見える。しかし、教育が消費に影響するのは、これから本番を迎えそうだ。SDGs(持続可能な開発目標)などを扱う新しい学習指導要領は20年に小学校高学年から実施され、中学校、高校へと順次広がっている。
この新学習指導要領の前文・総則には「持続可能な社会の創り手の育成」が掲げられた。ESD(持続可能な開発のための教育)として02年、日本が「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で提唱したものとつながっており、SDGs教育の本格的な始まりを意味するという。
これまで、ESDの推進の拠点に位置付けられてきたものに、「ユネスコスクール」がある。ユネスコ憲章に示された理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校で、ユネスコが承認するものだ。ユネスコスクールは、53年に15カ国33校で発足して以来、23年4月で約1万2000校になった。日本は56年の6校から、24年4月で1088校まで拡大し、世界で最大規模だ。
地球規模の課題を自分事として捉え、解決に向けて自ら行動を起こす力を身に着ける教育が推進される日本。20年に小学校5年生だった子供たちは、SDGsのゴールである30年には20歳を超えている。その頃、若者の消費の意識調査は、今とかなり変わっているのではないだろうか。
(純)
《Z世代の環境意識について考える》