ラグジュアリー産業で、ファッションとホテルの領域が相互に浸透し始めている。富裕層の「体験」志向の高まりを背景に、ファッション企業はホテル事業へ、ホテルはライフスタイルやファッション領域へと進出し、新たな市場が活発化しつつある。仏LVMHがワインの「シュヴァル・ブラン」やジュエリーの「ブルガリ」を軸に体験価値を高めるホテル事業を強化しているのはその一例だ。
こうした動きが広がるなか、ザ・リッツ・カールトンがスペイン発ブランド「レイトチェックアウト」と展開する協業は、ホテル側からアプローチした。この取り組みは国際クリエイティブアワード「カンヌライオンズ」でゴールドを受賞。第2弾は昨年11月に発表され、世界各地で順次ローンチされている。
同ブランドの共同創設者兼クリエイティブディレクターのアレックス・トゥリオン氏によるネイビーやライトブルーなど同ホテルの伝統色を生かしたコレクション。俳優のジョシュ・ハッチャーソンを起用し、栃木・日光で撮影したキャンペーン映像は、静けさや内省の旅といったホテル体験を映画的に表現する。


欧州では、ジュネーブのザ・リッツ・カールトン・ホテル・ド・ラ・ペが独占的に披露した。同ホテルのマーケティング責任者ジョルジオ・コッラーディ氏は「精密やクラフトマンシップを尊ぶ街のDNAが、この協業を自然に引き上げた」と語る。160年の歴史を持つ世界最小のリッツ・カールトンで、ランウェーと没入型ガラを組み合わせた発表形式は、ホテルが文化の発信地として機能する姿を浮かび上がらせた。

同イベントに出席したトゥリオン氏は「Z世代はロゴや所有よりも、つながりとストーリーテリングを重視する。過剰な情報や刺激に疲れ、真実性が欠かせない」と指摘。体験価値へのシフトが進むなか、ホテルとファッションの協業は、若い世代に向けた新たなブランド接点となっている。
(パリ=松井孝予通信員)
