高速・高精度スキャン技術で店頭や倉庫での従業員の業務負担の軽減、ミスの撲滅などを通じ、世界の大手小売業界や物流業界で多くのユーザーを持つスキャンディット。重いハンディターミナルや設置場所が必要なPOS端末などに変わってスマートフォン1台で情報の読み込み、データの収集、在庫管理など様々な機能を実現できる画期的なソリューション提供する。ファッション業界でもその導入効果は大きく、その実力はコーチやJクルー、リーバイス、マックスマーラーなど世界の多くの有力企業で立証済みだ。日本のファッション業界にとっても大きなチャンスをもたらすスキャンディットのソリューションの可能性を探ってみよう。
スキャンディットって何?
スキャンディット(Scandit)は、09年にスイスで創業したIT(情報技術)企業。チューリッヒに本社を置く。米国、英国、フィンランド、ポーランドなどにオフィスを置く。アジアでは、20年11月に日本に進出、シンガポール、韓国、オーストラリアに拠点を構え、活動を行っている。
ソリューション導入企業は全世界で2000社以上。名だたる小売業や物流企業などが名を連ねる。日本ではイオンリテール、オーケー、カルビー、ハンズ、ベルク、ヤマト運輸、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)(五十音順)などもスキャンディットを導入、成果を上げている。
対応するデータはバーコード、QRコードから文字、ID(身分証明書)やオブジェクト(物体)など多岐にわたり、1000種類を超えるデータキャプチャソリューションに採用されている。現在運用しているアクティブなデバイスは1億5000万台を超えており、スキャン回数は年間数百億回以上に及ぶ。
世界110以上の国と地域が参加する国際的な流通情報標準化、バーコードなどの標準化団体であるGS1は同社のシステムを推奨している。
高いパフォーマンス
スキャンディットの特徴はバーコードスキャンのパフォーマンスが極めて高いこと。具体的には①読み取りスピード②読み取り困難コードの読み取り③様々なアングルからの読み取り④離れた位置からの読み取り⑤暗いところでの読み取りに優れた能力を発揮する。
これまではハンディターミナルからスマホにデバイスを移行することでパフォーマンスが低下すると言われてきたが、スキャンディットは、専用のハンディターミナルと同等もしくはそれ以上のスピードと正確さを合わせ持っている。
世界最高水準のスキャンエンジンを持つことで、従来のスキャンデバイスと比べて3倍以上のスピードでデータを読み込む。その際、複数のバーコードを一括してスキャンできる「MatrixScan(マトリックススキャン)」と呼ぶ機能によって、倉庫に積み上がった在庫の箱に表示されたバーコードを瞬時に読みこともできる。水濡れでかすんだり、よれたりしてこれまでは読めなかったバーコードも正確に読み取る。さらに正面だけでなく、斜め方向からの読み取りや、2m以上も離れた距離からの読み取り、薄暗い倉庫内での読み取り作業も難なくこなす。コスメ関連商品のように小さな商品の小さなバーコードも簡単に読める。
このことで、倉庫での棚卸や在庫確認、ピッキング作業が劇的にスピードアップ、従業員の負担も劇的に軽減できる。当然、手作業だと発生しうる人為的ミスはなくなり、確認作業にかかっていた人手は他の業務(例えば、お客様対応)に時間を振り分けることができる。文字列とバーコードを一括スキャンできることから、店頭商品の値札の確認などもスムーズに行える。RFIDのように通信状態によって精度が低下することもなく、スキャン漏れが起こらないことも強みだ。
スマホだけで始められる
スキャンディットのもう一つの大きなメリットは、導入コストが小さく済むことだ。高額な専用のハンディターミナルの購入、設置は不要で、すべての作業はスマホやタブレットなど汎用デバイスだけで実装できる。在庫管理や入出庫、店頭での商品管理だけでなく、POS情報の入力もスマホによるバーコード読み取りでできるため、店舗にPOS端末を設置する必要もなくなる。インバウンド顧客に対して、パスポートの読み取りもスマホで行い、専用端末がなくても免税価格の表示や免税処理などの顧客対応も可能だ。
スマホ1台で何役もこなせるので、ハード、ソフト面でのイニシャルコスト、ランニングコストが大幅に低減できるというわけだ。このため海外のユーザーでは、従業員の福利厚生要素も考慮し、最新の高性能スマホを導入、貸与し、勤務時間外であれば従業員の個人利用も許可することで、従業員満足度が向上した事例もあるという。
スマホはハンディターミナルと比べて軽いので、従業員の機動性を高め、逆に疲労は軽減する。仮に床に落としたりしても、軽量であるため、ハンディターミナルと比べて破損や故障などのダメージを受けにくいことも特徴に上げられる。
カスタマーユーズで広がる販売チャンス
スキャンディットの使い方にはもう一つ、カスタマー(顧客)利用がある。お店を訪れた消費者に店のアプリを使ってもらう。顧客が自身のスマホのアプリから商品のバーコードを読み取ることで、その商品に関わる情報が瞬時に表示される仕組みだ。色、柄、デザイン、サイズ展開、店頭及び倉庫、オンライン上の在庫の有無はもちろん、AR(拡張現実)機能も搭載していることからインサイト情報として、その商品の口コミ情報やデザイナーや作り手の想い、バックストーリーなども伝えることができる。このことで顧客の買い物満足度向上を促し、販売促進に直結できる他、従業員がより質の高い接客に集中するための作業効率化も狙える。
スピーディできめ細かいエンタープライズサポート
スキャンディットは導入がスムーズで、検証・開発・実装・運用の全てのフェーズで、各種技術サポートがワンストップで受けられる点も見逃せない。まず、必要となるのは基本的にスマホで、導入へのハードルは高くない。スキャンディットはスキャン技術に特化したIT企業であり、豊富な専門知識を持つコンサルタントが大勢在籍しているため、ユーザー要件への深い理解に基づいた技術サポートが受けられる。このため、ユーザーが必要とする機能を持つモバイルアプリの開発着手からデバイスの導入まで通常は8週間程度で済む。
特別なハードウエアが必要ないため、導入時からすべての機能をフル装備しなくても、実装し利用を開始してから必要に応じてその都度機能を追加していくことも可能だ。
スキャンディット合同会社シニアディレクターで、ITエンジニア出身でもある日本事業責任者の関根正浩さんはスキャンディットの技術について、「日本では、グローサリー系大手小売りや物流業界で先行して既に多くの企業にお使いいただいていますが、欧米同様にファッション業界にも大きく貢献できることをぜひ知っていただきたい」と語る。無理、無駄の排除、正確でスピーディかつスマートな業務遂行へスキャンディットの可能性は大きく広がる。
スキャンディットの導入事例
≪リバーアイランド≫ハンディを止め、スマホ1台であらゆる業務をシームレスに
世界に300店舗、5000人を超える店舗従業員を持つ小売・流通業。わずか8週間でスマートデバイスを導入、数日でスキャンディットのソフトウェアを展開した。
商品情報の取得、在庫確認と発注、クリック・アンド・コレクト、モバイルPOS、トランシーバ連絡を1台のスマートデバイスでシームレスに実現した。この結果、商品に関する正しい情報を迅速に取得し、来店客や従業員に伝達する手段を手に入れた。これによって、大幅なTCO(トータルコスト)削減と生産性向上させた。さらには来店客を待たせることなく情報提供することで顧客満足度にも繋がっている。
≪デカトロン≫セルフスキャン・アプリの導入でバスケットサイズが20%増大
世界57カ国1,000都市に1,647店舗を展開、80種類のスポーツ、5,000点以上の関連商品を販売している世界最大のスポーツ用品小売業のデカトロン。アジア拠点の店舗はショッピングモール内が多く、店舗面積に制限があった。このため、膨大な商品の保管、販売が困難になっていた上、在庫不足による機会損失も生じていた。
そこで、同社はスキャンディットのBarcode Scanner SDKを採用、来店客用のセルフスキャン・アプリに統合した。来店客は店舗にいながらEC経由でデカトロンのすべての商品にアクセスすることが可能となり、販売促進を実現。EC売上高に占めるアプリ経由の購入比率がシンガポールでは30%に、インドでは90%に上昇した。また、顧客満足度スコアが向上し、5段階評価で4.8を獲得した。
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