大手セレクトショップがSCを主力とするストア業態のブランド認知やイメージ向上に向け、路面の旗艦店を使った消費者への発信機能を強化している。既存店とは異なる品揃えや店頭での仕掛けを通じてノウハウを蓄積し、競合テナントがひしめくSC内店舗での差別化の切り口や更なる成長への切り口を模索しているようだ。(柏木均之)
■ありふれない
ユナイテッドアローズは、9月下旬、自由が丘に「グリーンレーベルリラクシング」初の路面店をオープンした。目指すのは「グッド・ローカル・ストア」。SC立地とは異なり、地元住民の取り込みを狙った店舗だ。同業態は99年に本格出店を開始した。レディス、メンズのほか子供服まで扱う。
オリジナル比率も高く、これまで広域集客の見込める好立地のSCを中心に出店してきた。店舗数は60を超え、同社の主力業態の中では最大規模だ。ただ、出店を拡大する中で「どこでも買えるくらいにまで店舗がある状況下で、ありふれた存在にならないための次の打ち手が必要になっていた」。
同業態はこの秋さらに2店をSC立地に出す。だが、「今後も拡大していくには、SC立地以外でもやっていける、店の個性を身に着けないと、既存店も活性化しない」。
自由が丘店は、通常の店舗より価格帯の高い、同店限定の仕入れ商品も置くほか、季節ごとに地元住民を集めるイベントも店頭で開催する。
「沿線の商業施設内に既存店もある。SCの集客力に頼れない環境下で、わざわざ来てもらうためにどんなコンテンツが必要か」。自由が丘の路面店で、これまでと違うアプローチを試みることで、SC店舗にも流用できる、個店の個性を演出する手法を見いだす考えだ。
■軸はぶらさず
ベイクルーズグループの「ジャーナルスタンダード・レリューム」は、表参道の旗艦店を9月に改装した。「同じ価格帯で比べた際に、最良の品質」を目指した、アメカジのベーシックアイテムをユニセックスで提供するのがコンセプトだ。
都心、郊外SCに出店している。業績は好調で、15年8月期は既存店売上高が2ケタ増となった。16店あり、年内にさら3店を出す。このタイミングで旗艦店の改装に踏み切ったのは「さらに規模を拡大するために、旗艦店を今までよりもっとうまく使い、上質なベーシックを販売するショップとしての認知度を上げる」ためだ。
改装を機に、表参道店はエントランスの間口を広げ、入り口付近には、ポップアップイベント用のコーナーも設けた。仕入れ商品は、SC店の平均約20%に対して、30%程度まで高め、表参道限定ブランドも販売する。
今後もSC主体に出店を拡大するが、品揃えは立地に応じて柔軟性を持たせる。
出店場所ごとに異なるニーズに応える一方で、旗艦店では「オリジナルだけでなく、仕入れ商品も含め、時代ごとの気分やトレンドをしっかり捉えた提案を強く出すことで、ブランドイメージの軸をぶらさないようにする」考えだ。
成長を維持しつつ、競合テナントとかぶらない店作りのための施策が今後、セレクトショップのSC向け業態でさらに増えていきそうだ。