名物広報さんに聞く、あなたの仕事観

2016/03/22 13:35 更新


《センケンコミュニティー》情報発信し人と人つなげる面白さ

 私たちメディアが日々、大変お世話になっている広報さん。普段は黒衣に徹し、なかなか表舞台に出ることはありません。ですが、情熱的で面白い方が多く、ご紹介できないのはもったいない! というわけで、今回は普段はなかなか聞くことのできない仕事観についてお聞きしました。

 

◆「グリード」プレス山本了子さん
◆コックス広報グループマネージャー新海桃子さん
◆TSIホールディングス管理本部広報室長山田耕平さん
◆ユニチカ経営企画部IR広報グループ佐々木謹尚さん
◆三越伊勢丹ホールディングス業務本部総務部コーポレートコミュニケーション担当マネージャー森安花果さん

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「グリード」プレス山本了子さん

愛があれば口下手でも伝わる
「同じブランドに長くいて、業界の皆さんと共に歩んできたことが糧になっている」と山本さん
「同じブランドに長くいて、業界の皆さんと共に歩んできたことが糧になっている」と山本さん

 

 「話をするのはあまり得意ではないですが、自分のブランドが好きっていう気持ちや愛があれば、口下手でも伝わるのかなと思っています」と話すのは、レディスブランド「グリード」のプレス、山本了子さん。00年以来、デザイナーの山田あゆみさんとタッグを組み、プレスを務めている。

 この仕事に就いたのは、山田さんの作る服が大好きだったから。「どんな職種でもいいから一緒に働きたい」と連絡したところ、学生時代に雑誌ライターのアシスタントをしていた経験を買われ、プレス担当を任された。当時はプレス担当がほかにおらず、仕事は手探り。「全てスタイリストさんに教えていただいた」。自身で切り開いてきた道だからこそ、仕事への愛着は強い。

 プレス担当として、「デザイナーと同じ思いでいること」を常に意識している。山田さんと話す時間が無い日もあるが、「生地を選ぶ姿、1㍉単位でディテールをつめる姿を近くで見ているから、思いを感じ取ることができる」。

 1日のリース件数は8~10組。様々な雑誌やスタイリストと付き合いがあり、仕事のやり方はそれぞれ異なる。「相手の望むことを理解しようと務めています」

 5歳と7歳の2児のママでもある。「スタイリストさんにもママが増えました。子どものこと、他愛もないことが色々話せるから、ここに来ると楽だなって思っていただけているのかもしれません」

 


コックス広報グループマネージャー新海桃子さん

会社を俯瞰(ふかん)できる仕事
「情報発信とともに、つないでいくことが広報の仕事かなと思う」と新海さん
「情報発信とともに、つないでいくことが広報の仕事かなと思う」と新海さん


 07年に新卒入社し、販売員、店長、店舗スーパーバイザー、売り場作り(VMD)担当など複数の職種を経て、14年4月に広報に就いた。それ以前は社内に広報専任部署が無く、新海さんは開拓者。「これまでも新設部署に配置されることが多かったので、私にやらせれば何とかするだろうと思ってもらえているのかもしれません」と笑う。

 部署立ち上げ前の約1年間、親会社のイオンに出向し、広報職の修行を積んだ。「全く知らない世界で、まるで新入社員に戻ったような気持ち」だったが、「社外から見ればそんな事情は関係なく、私もイオン広報の一員」。プレッシャーの中で仕事をしたことが糧になった。

 現在は、対社外・社内どちらの広報活動も手掛ける。「自分のことではなく、会社や誰かの代弁をするのが広報。客観的事実を伝えるとともに、そこにそれぞれの思いものせないといけないのが難しい」。ノウハウを求め、指南本を読みあさったり、セミナーに通ったりもしている。

 今後は、「社内外で、もっと(情報や事象、人を)つないでいきたい」。広報として働く中で、「この部署は会社を俯瞰(ふかん)できるから、会社に横串を通すこともできる」と考えるようになった。

 その第一歩として、従来はブランド別でバラバラに行っていた古着回収などの社会貢献活動を全社で七つにまとめるよう働きかけ、より大きなインパクトが出るようにした。

 

★TSIホールディングス管理本部広報室長山田耕平さん

グループ会社の潤滑油

決算発表前の繁忙期を除いては夜の予定もびっしり。社内外の人間と酒を飲み交わし、情報をアップデートしている


 油圧機器メーカーから転身し、02年にサンエー・インターナショナル(当時)に入社した。1年目は総務、2年目は株式法務と広報を兼務し、3年目から広報専属となった。現在はIRから取材対応、さらにはグループ会社の日割りの売り上げ管理システムの担当と、幅広い業務をこなす。

 入社当時は初めてのアパレル業界で、服の知識はほぼゼロ。しかも婦人服が中心の会社で「ティアードって何?って感じでした」。同じ部署で働く女性の同僚に付き合ってもらいながら展示会で勉強した。

 大事にしているのは、現場とのコミュニケーションを密に取ること。「現場の気持ちが分からないと、現場の人にも信頼されない」からだ。「聞かないと分からないことってあるし、情報発信の際には内側で働いている人の気持ちも伝えたい」。その信条は株式法務を担当していたころから変わらない。株式法務と現場の気持ちは無関係に思われがちだが、「現場のことを分かっているのと分かっていないのは全然違う」と断言する。

 広報としてできることをフル活用し、グループ会社間の潤滑油的な存在にもなっている。11年にサンエー・インターナショナルと東京スタイルが経営統合して以降、グループ会社がぐんと増えた。社内報を担当していた時は、社をまたいだ座談会を企画し、夜には交流会も開催。積極的に飲み会にも顔を出し、自ら幹事をすることも多い。「現場の横のつながりを作り、仲良くなってもらえたらうれしいですね」


ユニチカ経営企画部IR広報グループ佐々木謹尚さん

歴史重ねた会社の今を知ってもらう
ユニチカ・佐々木さん
名門バレーボールチームのコーチから転身。40年を数えるマスコットガールの活動も広報が主導する


 64年東京五輪での「東洋の魔女」の活躍で知られる名門女子バレーボールチーム(現在は廃部)のコーチとして入社したが、故障のためにチームを離脱。97年に広報へ異動した。一時営業を挟んで、東西で延べ16年の経験を持つベテラン広報マンだ。
 繊維を祖業に127年の歴史を持つ同社だが、現在はフィルム、樹脂、不織布など業種はさまざま。「歴史を重ね、繊維だけでなく幅広い事業を手掛けている今のユニチカをもっと知ってほしい」との思いで仕事に臨む。

 ユニチカのPR係として大事な役目を担っているのが、40年続く「ユニチカマスコットガール」だ。佐々木さんは、事務所との折衝、お披露目の記者発表、撮影、事業所訪問などマスコットガールの活動を取り仕切る。初代の風吹ジュンさんから、紺野美沙子さん、忽那汐里さんといった著名タレントを輩出しており、巣立ったマスコットガールの活躍も楽しみの一つという。

 消費者向け商品では釣り糸を扱うが、14年から釣り専門の提供番組がスタート。契約プロやマスコットガールに登場してもらい、釣りの魅力アップや自社製品のアピールに力を注ぐ。

 華やかな現場ばかりに思えるが、時には厳しい仕事も。社会的責任を問われるような事態が起これば、広報は事態収拾の最前線に立たされる。対応次第で企業イメージも損なうような立場に改めて責任の重さを感じたという。

 「あれもこれも仕事は多岐にわたるが、いろんな人たちと一緒に仕事ができ、やりがいを感じる」と奮闘する。


三越伊勢丹ホールディングス業務本部総務部
コーポレートコミュニケーション担当マネージャー
森安花果さん

社内誌編集長の経験生かして
入社後は育児制度をフル活用して仕事と母を両立。2人の子どもは現在高校生に
入社後は育児制度をフル活用して仕事と母を両立。2人の子どもは現在高校生に


 「現場で奮闘している人を日々、目の当たりにするのがこの仕事。それをきちんと社内外に発信できたとき、やりがいを感じます」と話すのは、三越伊勢丹ホールディングスの森安花果さん。91年入社後、伊勢丹新宿本店のリビングやベビー・子供服部門を経て02年から広報に。社内広報を約10年務め、13年から社外広報を務める。
 社内広報時代の経験が今につながっている。同社は朝礼時に店頭のモニターで社長のメッセージなどの「テレビ社報」を流すことがあるが、その番組にキャスターとして出演していたのが森安さん。おかげで「社内中に顔を知られている」と笑う。また社内広報誌の編集長でもあったため、ネタを見つけて取材をし、原稿を書く毎日を「少しは記者の方の気持ちを体験できたかも」と振り返る。
 そうして社内の人脈やコミュニケーション力を培ったことで、社外広報に就いてからは「社員が情報を積極的に教えてくれるようになった。社内調整をどうすれば良いのかなど、よろずやのように相談されることもある」。メディアとの付き合い方では「締め切りが迫っている場合もあるので、なるべく早いレスポンス」を意識。受けた取材はメディアの意図をくみつつ、社内で発信したいことと大きな隔たりがないよう、意見のすり合わせや調整に余念がない。
 15年から企業メッセージ「ディス・イズ・ジャパン」を発信している同社。海外へのPRが増えており「英語をもっと勉強しないと」と意気込む。



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