「日本型DtoCで海外に売るべし」 ターンアラウンドマネージャーの河合氏に聞く

2022/09/06 06:25 更新


 企業再生で実績のある、ターンアラウンドマネージャーの河合拓氏が自身の「最終作」という3冊目の書籍『知らなきゃいけないアパレルの話』(ダイヤモンド社)を出版した。国内市場が縮小するなか、世界で成長するシーインなどDtoC(メーカー直販)の研究や統計データを基に「不都合な真実を直視し、大きな視点で新しい教科書」(河合氏)と書き下ろした。発刊を機に業界に向けた意見を聞いた。

(矢野剛)

 注目が集まる「サステイナビリティー(持続可能性)そのものは人類存続に不可欠だが、解釈のズレが産業界を苦境に追い込む可能性がある。例えば、各調査で環境に配慮した製品への消費者の関心は高いが、実際に購入する人は5%程度。日本は経済成長もOECD(経済開発協力機構)では最も低く、環境コストを払える人はごく一部」と指摘。新疆綿を巡る問題でも「構造的に原料のトレーサビリティー(履歴管理)をさかのぼることは困難で、現実的に川上にヘッジしている。そもそも、国の方針を明言すべき」と強調する。

 DtoCを巡っても「本来はNBを生産・販売する製造業の事業を指すが、アパレル産業では川下も行うという解釈の混乱が起きている。『顧客と一緒に物作りを行うのがDtoC』と言う企業もあるが、顧客は売り場や接客で新しい発見があって欲しい物に気付く。それをQRで追うだけでは1.5歩先には進めない」。こうした混乱は「変化に対して知らぬ間に硬直化している可能性」を指摘する。

 では、今後の業界はどこに向かうべきか。「(アパレルは)日本では衰退産業だが、世界的に見れば成長産業であり、アジアでは日本も安心・安全というブランドイメージはいまだ消えてはいない。アジア・太平洋地域全体を視野に入れた戦略が必要で、5年後では遅い」と語る。

 中国を見れば、シーインのような企業がいくつも誕生しており「破壊力がある越境DtoC」との戦いが待ち受ける。日本企業も「ビッグデータを活用し、世界に誇る技術を持つ産地や商社と組み、日本型DtoCによる調達効率で、輸出と三国間ミックスによる反転ができるはず」と示唆。「トウキョウをショールームに(国内には)売らない日本でいい。独自のファッションを海外に売る」ぐらいの大きな視点が必要と提案する。


ターンアラウンドマネージャー 河合拓氏

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